遺伝子型2および3型のC型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療において、ソホスブビル(SOF)とvelpatasvir(VEL)の併用療法は、従来の標準治療に比べ持続性ウイルス学的著効(SVR)の達成率が優れることが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のGraham R Foster氏らが実施した2つの臨床試験(ASTRAL-2、-3試験)で示された。ヌクレオチドアナログNS5Bポリメラーゼ阻害薬であるSOFは、リバビリン(RIB)との併用で2/3型HCVの治療薬として使用されている。VELは、すべての遺伝子型のHCVに抗ウイルス活性を有する新規NS5A阻害薬であり、SOFとの併用の第II相試験で慢性2/3型HCV感染患者において良好なSVR率が報告されている。NEJM誌オンライン版2015年11月17日号掲載の報告。
遺伝子型別の2つの試験に800例以上を登録
ASTRAL-2試験は遺伝子型2型HCVを、ASTRAL-3試験は3型HCVを対象とする多施設共同非盲検無作為化第III相試験(Gilead Sciences社の助成による)。
対象は、両試験とも年齢18歳以上で、6ヵ月以上のHCV感染歴がある患者とし、インターフェロンを含むレジメンでSVRが達成されなかった患者を約20%、代償性肝硬変を有する患者を約20%登録することとした。
ASTRAL-2試験では、SOF(400mg)とVEL(100mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+VEL群)またはSOF(400mg)とRIB(体重<75kg:1,000mg、≧75mg:1,200mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+RIB群)に無作為に割り付けられた。ASTRAL-3試験では、SOF+VEL群はASTRAL-2試験と同じく12週、SOF+RIB群は24週の投与を行った。
主要評価項目は、治療終了から12週時のSVRとし、SVRはHCV RNA<15IU/mLと定義した。
ASTRAL-2試験では、2014年10月15日~12月18日に米国の51施設に266例が登録され、SOF+VEL群に134例、SOF+RIB群に132例が割り付けられた。ASTRAL-3試験では、2014年7月30日~12月17日に北米、欧州、オセアニアの8ヵ国の76施設に552例が登録され、SOF+VEL群に277例、SOF+RIB群には275例が割り付けられた。
12週時SVR達成率:2型 99 vs.94%、3型 95 vs.80%
平均年齢は、ASTRAL-2試験が両群とも57歳、ASTRAL-3試験はSOF+VEL群が49歳、SOF+RIB群が50歳で、男性がそれぞれ64%、55%、61%、63%であった。ASTRAL-2試験は肝硬変患者が両群とも14%、既治療例がそれぞれ14%、15%含まれ、ASTRAL-3試験は肝硬変患者が29%、30%、既治療例は両群とも26%だった。
治療終了から12週時のSVR達成率は、遺伝子型2型HCVではSOF+VEL群が99%(95%信頼区間[CI]:96~100)と、SOF+RIB群の94%(95%CI:88~97)に比べ有意に良好であった(p=0.02)。3型HCVでは、それぞれ95%(95%CI:92~98)、80%(95%CI:75~85)であり、SOF+VEL群で有意に優れた(p<0.001)。
治療終了後の再燃が、2型HCVではSOF+VEL群には認めなかったが、SOF+RIB群で6例(5%)にみられ、3型HCVではそれぞれ11例(4%)、38例(14%)に認められた。治療中のウイルス学的治療不成功が、3型HCVのSOF+RIB群で1例に認められた。
3型HCVでは、未治療の非肝硬変例の12週時SVR達成率はSOF+VEL群が98%、SOF+RIB群は90%、肝硬変例はそれぞれ93%、73%であり、既治療の非肝硬変例は91%、71%、肝硬変例は89%、58%と、いずれもSOF+VEL群で良好な傾向がみられた。
最も頻度の高い有害事象は、疲労(2型:SOF+VEL群15%、SOF+RIB群36%、3型:SOF+VEL群26%、SOF+RIB群38%)、頭痛(18、22、32、32%)、悪心(10、14、17、21%)、不眠(4、14、11、27%)であった。有害事象による治療中止は、2型HCVのSOF+VEL群で1例(不安、頭痛、集中力低下で第1日に中止)、3型HCVのSOF+RIB群で9例に認められた。
重篤な有害事象は、2型HCVのSOF+VEL群で2例(1%、肺炎が1例、腸炎と腹痛が1例)、SOF+RIB群で2例(2%、関節炎が1例、うつ状態が1例)、3型HCVではSOF+VEL群が6例(2%)、SOF+RIB群が15例(5%)に発現した。
著者は、「代償性肝硬変例を含む遺伝子型2および3型HCVに対し、ソホスブビル+velpatasvir併用療法は、前治療の有無にかかわらずソホスブビル+リバビリンによる標準治療よりも高いSVR率を達成し、有害事象や検査値異常の頻度が低かった」とまとめ、「遺伝子型1、2、4、5、6型HCVを対象としたASTRAL-1試験の結果と統合すると、SOF+VEL併用の12週投与は遺伝子型にかかわらず高い有効性を発揮すると考えられる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)