英国・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのJane Wardle氏らは、NHS大腸がんスクリーニングプログラム(ASCEND)の受診に関する、社会経済的格差低減のための戦略を明らかにするため、4つのエビデンスのある受診勧奨の介入(小冊子配布など)について検討を行った。その結果、効果が認められたのは、スクリーニングの申し込みを再度促すバナー付きリマインダーレター送付の介入であったという。英国では国家的な大腸がんスクリーニングプログラムが行われているが、受診状況は社会経済的状況によってばらつきがあるという。研究グループは、スクリーニングの健康ベネフィットを改善するため、この格差を低減するための4つの介入について検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。
4試験で、補足的介入の効果を比較
検討は、イングランドのスクリーニング適格者(60~74歳男女)を、4つのクラスター無作為化試験に包含して行われた。無作為化は受診招待日に基づいて実施。対象者の自宅住所に基づきMultiple Deprivation scoreを用いて社会経済的状況(貧困度)を定義した。
4試験ではそれぞれ、標準的な情報提供と、標準的な情報提供+補足的介入を行い比較した。
補足的介入はいずれもエビデンスのあるもので、試験1(2012年11月実施)では、読み書き、演算の能力が乏しい人でも理解しやすいとされている、キーとなるスクリーニング情報の骨子をまとめた小冊子を配布。試験2(2012年3月)では、読み書き能力に乏しい人との効果的なコミュニケーションと認知されているナラティブインフォメーションを活用した小冊子を配布した。具体的には、スクリーニング体験者の実経験に基づき創作した、検査結果やポリープ切除、スクリーニングで大腸がんを発見といったスクリーニングのアウトカムについての物語。試験3(2013年6月)では、かかりつけ医によるプログラム参加推奨の招待状を配布した。この介入は、家庭医の介入により社会経済的状況が低い群でスクリーニング受診が改善したという国際的エビデンスに基づく。試験4(2013年7~8月)は、スクリーニングの申し込みを再度促すバナー付きリマインダーレターの送付であった。
リマインダーレター送付が効果あり、冊子配布や医師の推奨レターは格差を解消せず
4試験はスクリーニングプログラムに組み込まれていたため、ほぼ全員のフォローアップが可能であった(追跡不可0.5%未満)。
結果、試験1(16万3,525例)と試験2(15万417例)は、受診改善の効果が全体的にも、社会経済的格差に対しても認められなかった。
試験3(26万5,434例)では、社会経済的格差に対する効果はみられなかったが、全体的な受診の改善は認められた(補正後オッズ比[OR]:1.07、95%信頼[CI]:1.04~1.10、p<0.0001)。
試験4(16万8,480例)では、有意な相互作用が社会経済的格差において認められ(p=0.005)、最低五分位の貧困度群(補正後OR:1.00、95%CI:0.94~1.06、p=0.98)よりも、最高五分位の貧困度群(1.11、1.04~1.20、p=0.003)で効果が強かった。なお、全体的な受診も有意に増大した(1.07、1.03~1.11、p=0.001)。
結果を踏まえて著者は、「4つのエビデンスのある介入のうち、リマインダーレターが、スクリーニングの社会経済的格差を低減することが示された。しかし、さらなる格差の改善がレター送付だけで図れるのかは、チャレンジングなことだろう」と述べている。