女性の不妊に関わる遺伝子変異が判明/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/05

 

 βチューブリン遺伝子(TUBB)8の変異が、微小管の形成や動態、卵母細胞の減数分裂と紡錘体形成ならびに卵母細胞の成熟を妨害し、優性遺伝的に女性の不妊症を引き起こすことを、中国・復旦大学Ruizhi Feng氏らが、不妊症の女性を含む24家族のDNA解析の結果、明らかにした。受精は、第二減数分裂中期で停止している成熟した卵母細胞に精子細胞が侵入することで開始するが、ヒト卵母細胞の成熟停止の原因となる遺伝的異常は明らかにされていなかった。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。

不妊症患者を含む24家族でTUBB8の塩基配列を解析
 研究グループは、4世代一家の家族員5人(うち3人は卵母細胞の第一減数分裂の停止による不妊症)についてエクソーム解析を行った。また、この一家の5人以外の家族員、ならびに不妊症患者がいる他の23家族の家族員から採取したDNA検体を用い、候補遺伝子(TUBB8)のDNA塩基配列をサンガー法により決定した。

 さらに、ヒト卵母細胞、初期胚、精子細胞および数種の体細胞組織におけるTUBB8および他のすべてのβ-チューブリン アイソタイプの発現について、RT-PCR法により検討するとともに、αチューブリンおよびβチューブリンからなるヘテロ二量体のin vitroでの形成、HeLa細胞の微小管構築、酵母細胞の微小管動態、マウスとヒトの卵母細胞における紡錘体集合に対するTUBB8変異の影響について評価した。

TUBB8の変異により卵母細胞の成熟が停止
 その結果、TUBB8の変異が7種同定され、その変異は24家族中7家族において、卵母細胞の第一減数分裂が停止する原因であることが確認された。

 TUBB8は、霊長類にのみ存在する遺伝子であるが、その発現は卵母細胞および初期胚に特有で、卵母細胞および初期胚に発現するβチューブリンのほとんどを占めている。TUBB8はヒト卵母細胞および初期胚に高濃度に発現する唯一のβ-チューブリン アイソタイプであり、成熟した精子や体細胞組織(脳や肝臓など)には存在しないことが明らかとなった。

 また、TUBB8の変異は、α/βチューブリンヘテロ二量体の形成に影響を及ぼし、培養細胞での発現で微小管の動きを阻害し、in vivoにおける微小管動態を変化させ、マウスやヒト卵母細胞では重篤な紡錘体形成異常と成熟停止を引き起こすことが示された。

 一方で、不妊女性の一部でTUBB8変異が認められなかったことから、著者は「他のまだ発見されていない遺伝子異常がヒト卵母細胞の成熟停止に関与している可能性が示唆される」とも指摘している。

(医学ライター 吉尾 幸恵)