腎移植後の維持免疫抑制療法において、belataceptは従来の治療レジメンに比べ、長期的なアウトカムを改善するとの研究成果を、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のFlavio Vincenti氏らが、NEJM誌2016年1月28日号で報告した。免疫抑制療法は腎移植患者の短期的なアウトカムを改善することが知られているが、長期的な移植腎生着への効果を示すデータはほとんどない。belataceptは、ヒトIgG1のFc部分とCTLA-4の細胞外ドメインの融合蛋白で、共刺激の遮断を介してT細胞の活性化を選択的に阻害する(選択的共刺激遮断薬)。本薬は、従来のカルシニューリン阻害薬による有害作用を回避しつつ、高い免疫抑制効果をもたらすことで、腎移植患者の長期アウトカムを改善することを目的に開発されたという。
移植後7年時の3群のアウトカムを比較
本研究(BENEFIT試験)は、腎移植患者の維持免疫抑制療法として、belataceptをベースとするレジメンと、シクロスポリンベースのレジメンを比較する無作為化第III相試験である(Bristol-Myers Squibb社の助成による)。
これまでの解析では、患者の生存率と移植腎生着率が同程度で、腎機能はbelataceptで有意に改善することが確認されており、研究グループは今回、本試験の最終結果を報告した。
被験者は、belataceptの治療強度の高いレジメン、治療強度の低いレジメン、シクロスポリンベースレジメンの3群のいずれかに無作為に割り付けられた。無作為化の対象となり、実際に移植を受けた全患者の有効性と安全性を、7年(84ヵ月目)の時点で解析した。
2006年1月13日~2007年6月14日に666例が移植を受け、660例が免疫抑制療法の対象となった(高強度群:219例、低強度群:226例、シクロスポリン群:215例)。このうち84ヵ月のフォローアップを完遂したのは、高強度群が153例、低強度群が163例、シクロスポリン群は131例だった。
死亡/移植腎喪失リスクが改善、重篤な有害事象は増加せず
7年時の死亡または移植腎喪失のリスクは、シクロスポリン群に比べ、高強度群(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.35~0.95、p=0.02)および低強度群(HR:0.57、95%CI:0.35~0.94、p=0.02)の双方で43%有意に低下した。
死亡率は、シクロスポリン群に比し高強度群が38%(HR:0.62、95%CI:0.33~1.14、p=0.11)、低強度群は45%(HR:0.55、95%CI:0.30~1.04、p=0.06)低下し、いずれも改善の傾向がみられた。
移植腎喪失率はそれぞれ44%(HR:0.56、95%CI:0.25~1.21、p=0.12)、41%(HR:0.59、95%CI:0.28~1.25、p=0.15)低下し、やはり有意差はないものの改善の傾向が認められた。
平均推算糸球体濾過量(eGFR)は、2つのbelatacept群は7年間で増加した(高強度群=12ヵ月:67.0、36ヵ月:68.9、60ヵ月:70.2、84ヵ月:70.4mL/分/1.73m
2、低強度群=66.0、68.9、70.3、72.1mL/分/1.73m
2)が、シクロスポリン群は低下した(52.5、48.6、46.8、44.9mL/分/1.73m
2)。belatacept群全体の腎機能の治療効果は、シクロスポリン群に比べ有意に良好だった(p<0.001)。
84ヵ月時の重篤な有害事象の累積発生率は、高強度群が70.8%、低強度群が68.6%、シクロスポリン群は76.0%であり、3群でほぼ同等であった。重篤な感染症の頻度が最も高く、高強度群の10.6%、低強度群の10.7%、シクロスポリン群の13.3%に認められた。
著者は、「これまでに報告された他剤のアウトカムの検討は移植後5年までであり、7年時の生存ベネフィットが確認されたことの意義は大きいと考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)