頸動脈ステント留置術(CAS)の頸動脈内膜剥離術(CEA)に対する非劣性が、高リスクではない高度無症候性頸動脈狭窄症患者において示された。5年の追跡調査で、非手術関連脳卒中、全脳卒中および全生存率も、両群間で有意差は認められなかった。これまでの臨床試験で、遠位塞栓を予防するデバイス(embolic protection device:EPD)を用いたCASは、手術による合併症の標準または高リスク患者において、CEAの代替として効果的な治療であることが示唆されていたが、米・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らは、高リスクに該当しない患者のみを対象にEPD併用CASとCEAを比較する多施設共同無作為化比較試験「Asymptomatic Carotid Trial(ACT) I」を実施、その結果を報告した。NEJM誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告。
1,453例でEPD併用CASとCEAを比較する非劣性試験
研究グループは、無症候性(登録前180日以内の脳卒中・一過性脳虚血発作・一過性黒内障の既往なしなど)の高度(70%以上)内頸動脈狭窄を有する79歳以下の患者で、合併症高リスクに該当しない患者を、EPD併用CAS群とCEA群に3対1の割合で無作為割り付けした。試験は当初1,658例の患者登録を予定していたが、登録が進まず1,453例で中止となった。追跡調査期間は5年間であった。
主要複合エンドポイントは、術後30日以内の死亡・脳卒中・心筋梗塞、または1年以内の同側脳卒中とし、非劣性マージン3%で評価した。
CASの非劣性を証明、5年転帰も有意差認められず
解析対象は2005~13年に無作為化された計1,453例(CAS群1,089例、CEA群364例)で、平均年齢は両群とも68歳、ほとんどが65歳以上であった。
主要複合エンドポイントのイベント発生率はCAS群3.8%、CEA群3.4%で、CASのCEAに対する非劣性が認められた(非劣性に関するp=0.01)。30日以内の死亡または脳卒中の発生率は、CAS群2.9%、CEA群1.7%であった(p=0.33)。
副次エンドポイントの合併症複合評価項目(術後30日における脳神経損傷、血管損傷、脳出血以外の出血など)のイベント発生率は、CAS群2.8%、CEA群4.7%であった(p=0.13)。術後30日から5年までの手術に関連しない同側脳卒中の無発生率はCAS群97.8%、CEA群97.3%(p=0.51)、全生存率はそれぞれ87.1%および89.4%(p=0.21)。5年間の累積無脳卒中生存率は93.1%および94.7%であった(p=0.44)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)