腹腔鏡下胃バイパス手術における腸間膜欠損部について、閉鎖を支持する知見が示された。スウェーデン・オレブロ大学のErik Stenberg氏らが、12施設2,507例の患者を対象に行った多施設共同非盲検無作為化並行群間比較試験の結果、明らかにした。腹腔鏡下胃バイパス術後、頻度が高く重大な合併症として、内ヘルニアによる早期小腸閉塞がある。腸間膜欠損部の閉鎖を行うことで同発生が低下するかどうかは明らかにされていない。Lancet誌オンライン版2016年2月16日号掲載の報告。
術後30日時点で重大術後合併症を、3年時点で小腸閉塞手術の発生率を評価
試験は、スウェーデン国内12の肥満外科センターで行われ、腹腔鏡下胃バイパス手術が予定されていた患者を包含対象とした。
施術開始後に割り付けが記された封筒が開かれ、患者は空腸空腸吻合部下腸間膜欠損部およびPetersen's spaceを閉鎖する群もしくは非閉鎖群に無作為に割り付けられた。術後に割り付け手技を知らされた。
主要エンドポイントは、術後3年以内の小腸閉塞への手術(有効性エンドポイント)、および術後30日以内の重大合併症(安全性エンドポイント)であった。副次エンドポイントは、30日以内の全合併症、手術時間、術後入院期間などであった。解析は、intention-to-treat集団に基づいた。
再手術の累積発生率は閉鎖群で有意に低下
2010年5月1日~11年11月14日に、2,507例の患者が集められ、腸間膜欠損部閉鎖群(1,259例)または非閉鎖群(1,248例)に無作為に割り付けられた。手術時年齢は両群とも41.7歳、女性の割合が閉鎖群75%、非閉鎖群73%、BMI値は42.3、42.4であった。
このうち、2,503例(99.8%)が、30日時点の重大合併症の評価を受け、また、2,482例(99.0%)が25ヵ月時点で、小腸閉塞による再手術の評価を受けた。
術後3年時点で、小腸閉塞による再手術の累積発生率は、閉鎖群で有意な低下が認められた。累積発生率は閉鎖群0.055 vs.非閉鎖群0.102、ハザード比(HR)0.56(95%信頼区間[CI]:0.41~0.76、p=0.0002)であった。
一方で閉鎖群では、術後重大合併症のリスク増大が認められた(54例[4.3%] vs.35例[2.8%]、オッズ比:1.55、95%CI:1.01~2.39、p=0.044)。増大の主因は、空腸空腸吻合の屈曲であった。
著者は、「結果は、腸間膜欠損部の閉鎖をルーティンに行うことを支持する結果であった。しかしながら、腸間膜欠損部の閉鎖は、空腸空腸吻合の屈曲により引き起こされる早期小腸閉塞のリスク上昇と関連する可能性がある」とまとめている。