胆管径6mm以上の良性胆管狭窄で留置する金属ステントが胆嚢管に重なる可能性がない患者に対し、フルカバー自己拡張型金属ステント(fully covered self-expandable metallic stents:cSEMS)留置のプラスチックステント留置に対する、治療12ヵ月時点の開存達成の非劣性が示された。米国・サウスカロライナ医科大学のGregory A. Cote氏らが、非盲検多施設共同無作為化試験の結果、報告した。良性胆管狭窄に対しては内視鏡的治療が第1選択で、これまではプラスチックステント留置による治療が行われてきたが、複数本留置を要する症例がほとんどで、複数回の内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)を必要とする。近年、cSEMSが用いられるようになり、ERCPの必要数が減少する可能性が示唆されていた。JAMA誌2016年3月22・29日号掲載の報告より。
cSEMSとプラスチックステントを比較する無作為化非劣性試験を実施
研究グループは、米・英国の内視鏡治療専門施設8施設において、同所性肝移植(73例)、慢性膵炎(35例)および術後外傷(4例)による未治療の良性胆管狭窄患者(計112例)を対象に、非盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。
患者は2011年4月~14年9月に登録され、15年10月まで追跡調査が行われた。総胆管の直径が6mm未満、および留置するcSEMSが胆嚢管に重なる可能性のある患者は除外された。
対象患者を狭窄の原因で層別化し、プラスチックステント複数留置術群(プラスチック群)とcSEMS 1本留置術群(cSEMS群)に無作為化し、ステント留置後12ヵ月間、プラスチック群は3ヵ月ごと、cSEMS群は6ヵ月ごとに内視鏡的に開存を再評価した。
主要評価項目は、内視鏡的治療後12ヵ月時点での開存達成の割合とした。
開存達成はcSEMS群92.6%、プラスチックステント群85.4%で、非劣性が証明
プラスチック群は55例(年齢[平均±SD]57±11歳、女性17例:31%)、cSEMS群57例(年齢55±10歳、女性19例:33%)であった。
開存達成を認めたのは、プラスチック群85.4%(41/48例)、cSEMS群92.6%(50/54例)で、群間差は7.2%であった(片側95%信頼区間[CI]:-3.0%~∞、p<0.001)。事前に定めた非劣性マージンは片側95%CIの下限が-15%以上であり、cSEMS群のプラスチック群に対する非劣性が認められた。
開存達成に至るまでのERCP平均回数は、cSEMS群がプラスチック群より有意に少なかった(2.14 vs.3.24、群間差:1.10、95%CI:0.74~1.46、p<0.001)。
著者は、「治療後12ヵ月という追跡調査期間は、狭窄再発を評価するには不十分であり、今後さらなる検討が必要である」と指摘したうえで、「金属ステントは良性胆管狭窄患者に対する治療選択肢の1つと考えられるべきである」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)