化学放射線療法が適応の頭頸部がん患者の頸部リンパ節転移の治療において、PET-CTによる注意深い監視(PET-CT-guided surveillance:PET-CT監視)は、事前に予定された頸部郭清術(planned neck dissection:planned ND)に比べ予後は劣らないことが、英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らPET-NECK Trial Management Groupの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年3月23日号に掲載された。頸部リンパ節転移の管理では、前向き無作為化試験が行われていないため、種々の対処法が採られているという。planned NDは、予後の改善効果が示唆されているが、不要な手術や合併症のリスクを伴う。PET-CTは、メタ解析で良好な陰性予測値(94.5~96.0%)が報告されており、不要な手術の適応を抑制し、合併症を回避できる可能性がある。
PET-CT監視の有用性を無作為化非劣性試験で評価
研究グループは、化学放射線療法適応の頭頸部がんの頸部リンパ節転移に対する治療において、PET-CT監視とplanned NDを比較する前向き無作為化非劣性試験を行った(英国国立健康研究機構[NIHR]医療技術評価プログラムなどの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、Stage N2/N3のリンパ節転移を有する中咽頭、下咽頭、喉頭、口腔、原発巣不明の頭頸部の扁平上皮がんで、化学放射線療法の適応と判定された患者であった。
被験者は、化学放射線療法施行後にPET-CT監視を12週行う群、またはplanned NDの前後のいずれかに化学放射線療法を実施する群に無作為に割り付けられた。PET-CT監視群のうち、PET-CTで完全奏効が確証されないか、境界的と判定された患者には4週以内にplanned NDが行われた。
主要評価項目は、全生存期間(OS)であった。
2007年10月~12年8月までに、英国の37施設に564例が登録され、PET-CT監視群に282例、planned ND群にも282例が割り付けられた。
約80%で頸部郭清術が不要に、費用対効果も優れる
平均年齢はPET-CT監視群が57.6±7.5歳、planned ND群は58.2±8.1歳で、男性がそれぞれ79.1%、84.0%を占めた。全体の84%が中咽頭がんで、79%がN2a/N2bであり、74%が喫煙者/元喫煙者であった。また、75%が、がんの原因がヒトパピローマウイルス(HPV)であることの指標であるp16蛋白が陽性であった。
頸部郭清術は、PET-CT監視群が54例に行われたのに対し、planned ND群は221例に施行された。合併症の発生率は、それぞれ42%、38%とほぼ同等であった。
2年OSは、PET-CT監視群が84.9%(95%信頼区間[CI]:80.7~89.1)、planned ND群は81.5%(同:76.9~86.3)であった。死亡のハザード比(HR)は0.92(同:0.65~1.32)とPET-CT監視群でわずかに良好であり、planned ND群に対する非劣性が示された(95%CIの上限値<1.50、p=0.004)。
疾患特異的死亡率や他の原因による死亡率も両群間に有意な差はみられなかった(それぞれ、p=0.80、p=0.41)。また、p16陽性例(HR:0.74、95%CI:0.40~1.37)および陰性例(同:0.98、0.58~1.66)のいずれにおいても、両群間にOSの差は認めなかった。
重篤な有害事象は、PET-CT監視群が113例、planned ND群は169例に発現した。また、EORTC QLQ-C30による全般的健康状態(global health status)スコアは、6ヵ月時はPET-CT監視群のほうが良好であった(p=0.03)が、この差は12ヵ月時には小さくなり(p=0.09)、24ヵ月時には消失した(p=0.85)。
試験期間中の1例当たりの医療費は、PET-CT監視群がplanned ND群よりも1,492ポンド(約2,190米ドル)安価であった。
著者は、「両群のOSはほぼ同等であったが、PET-CT監視群では約80%の患者で頸部郭清術が不要となり、郭清術の遅延による不利益もなく、費用対効果が優れていた。HPV陽性例と陰性例の効果は同じであった」としている。
(医学ライター 菅野 守)