死亡リスクは肥満だけでなく過体重でも増大し、さらに痩せの場合も増加することが、ノルウェー・科学技術大学のDagfinn Aune氏らの検討で示された。痩せのリスク増加には、部分的に診断前疾患による交絡が影響している可能性があることもわかった。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年5月4日号に掲載された。高BMIは死亡リスクを増大させるが、最近のメタ解析(Flegal KM, et al. JAMA 2013; 309: 71-82)は、過体重では死亡リスクが低下し、リスクが増大するのはGrade 2(BMI≧35)の肥満に限られるとしている。しかし、この結果は、交絡因子としての喫煙や有病率の高い疾患、診断前疾患の影響を受け、多くの大規模コホート試験を除外したことによるバイアスの可能性があるという。
230試験、3,023万人、死亡数374万人のメタ解析
研究グループは、BMIと全死因死亡リスクに関するコホート研究を系統的にレビューし、メタ解析を行った(Central Norway Regional Health Authority(RHA)などの助成による)。用量反応曲線の形状と最低値を明らかにし、交絡因子としての喫煙、疾患による体重減少、発症前疾患が結果に及ぼす影響について検討した。
2015年9月23日現在、PubMedおよびEmbaseのデータベースに登録された文献を検索した。BMIを3つ以上のカテゴリーに分類し、全死因死亡との関連のリスクの補正推定値(ハザード比[HR]またはリスク比[RR])を報告しているコホート研究を選出した。
ランダム効果モデルを用いてBMIが5単位増加した場合の死亡のサマリー相対リスクと95%信頼区間(CI)を算出し、fractional polynomialモデルで非線形関係の評価を行った。
230件のコホート研究に関する207編の公表論文が解析の対象となった。
非喫煙者の解析には53件のコホート研究(リスク推定値の報告は44件)の43編の公表論文(参加者:>997万6,077人、総死亡者数:>73万8,144人)が、全参加者の解析には228件のコホート研究(リスク推定値の報告は198件)の191編の公表論文(参加者:>3,023万3,329人、総死亡者数:>374万4,722人)が含まれた(アジアの試験はそれぞれ11、49件)。
痩せの死亡リスク増加には診断前疾患による交絡が影響か
フォローアップ期間は、非喫煙者が平均14.2年、中央値12年、範囲3.9~35年、全参加者はそれぞれ13.8年、12年、2~42年であった。
BMI 5単位増分の死亡のサマリー相対リスクは、非喫煙者が1.18(95%CI:1.15~1.21、I
2=95%、44試験)、非喫煙健康成人(ベースライン時に健康であった非喫煙者)が1.21(1.18~1.25、93%、25試験)、フォローアップ期間が短い参加者を除外した非喫煙健康成人が1.27(1.21~1.33、89%、11試験)であり、全参加者は1.05(1.04~1.07、97%、198試験)であった。
非喫煙者ではJ字型曲線の用量反応関係が認められた(非線形性検定:p<0.001)。リスクが最も低かったのは、非喫煙者がBMI 23~24、非喫煙健康成人がBMI 22~23、フォローアップ期間が20年以上の非喫煙者はBMI 20~22だった。
これに対し、バイアスの可能性が高い解析や、フォローアップ期間が短い研究(5年未満、10年未満)、試験の質が中等度の研究では、BMIと死亡率の間にU字型の関係がみられた。
著者は、「過体重と肥満はいずれも全死因死亡のリスクを増大させる」と結論し、「痩せの死亡リスクの増加は、少なくとも部分的には、診断前の疾患による未処理の交絡に起因する可能性がある。元喫煙者、有病率の高い疾患や発症前疾患を有する集団、フォローアップ期間が短い集団を除外しないと、バイアスのため、結果がよりU字型曲線の関係に近づく可能性が示唆される」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)