抗PD-1抗体療法に対する耐性のメカニズムは?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/07/22

 

 悪性黒色腫の抗PD-1抗体療法に対する耐性は、インターフェロン受容体シグナル伝達や抗原提示経路の異常と関連していることが明らかとなった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJesse M. Zaretsky氏らが、悪性黒色腫患者4例の生検サンプルを分析し報告した。抗PD-1抗体療法で奏効(objective response)が得られた悪性黒色腫患者の約75%は、効果が永続的に長期間持続するが、客観的腫瘍縮小が最初に確認された後、治療を継続しているにもかかわらず遅発性再発がみられることがある。このことについて、免疫監視機構の回避メカニズムは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。

抗PD-1抗体療法で奏効後に遅発性再発を来した症例の生検サンプルを分析
 研究グループは、免疫チェックポイント阻害薬pembrolizumabを用いた抗PD-1抗体療法により客観的腫瘍縮小が確認され、数年後に病勢進行を認めた転移性黒色腫患者4例(再発までの平均期間は624日、範囲419~888日)を対象に、ベースライン時および再発時の病変の生検サンプルについて、免疫組織化学染色、免疫蛍光法、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリー法、ならびに遺伝子転写プロファイリング(全エクソーム解析)等により分析を行った。なお、ベースライン時の検体採取は、症例1はBRAF阻害薬(ベムラフェニブ)投与初期、症例2~4についてはpembrolizumab投与直前であった。

4例中3例で耐性獲得に関連する遺伝子変異を確認
 4例中2例において、耐性に関連する遺伝子変異として、インターフェロン受容体関連ヤヌスキナーゼ1(JAK1)またはヤヌスキナーゼ2(JAK2)をコードする遺伝子の、野生型対立遺伝子の欠失を伴う機能喪失型変異を確認した。

 症例3では、抗原提示蛋白β2ミクログロブリン(B2M)をコードする遺伝子の短縮型変異を認めた。JAK1JAK2の短縮型変異は、がん細胞の増殖阻害作用低下を含むインターフェロンγの活性低下をもたらしており、B2Mの短縮型変異は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIの表面発現の消失を引き起こした。

 症例4では、T細胞に対する耐性を獲得したことは明らかであったが、明確な遺伝子変異は確認できず、インターフェロン誘導遺伝子の発現変化による非遺伝子メカニズムが関与している可能性が示唆された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)