1型糖尿病の妊婦では、自動化された夜間クローズドループ療法は、センサー付きのインスリンポンプ(sensor-augmented pump:SAP)療法よりも良好な血糖コントロールをもたらすことが、英国・ケンブリッジ大学のZoe A Stewart氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年8月18日号に掲載された。妊娠中の1型糖尿病の合併症として、先天性異常、死産、新生児の死亡、早産、巨大児の発生率が増加する。妊娠していない1型糖尿病患者の血糖コントロールでは、クローズドループ療法がSAP療法よりも優れることが報告されているが、妊婦における効果や安全性、実行可能性のデータは十分でないという。
2つのデバイスをクロスオーバー試験で評価
研究グループは、1型糖尿病妊婦の血糖コントロールにおける2つのデバイスの有用性を比較する非盲検無作為化クロスオーバー試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。
16例が、クローズドループ療法(介入)とSAP療法(対照)をランダムな順序で4週間行った。引き続き、継続期には14例が昼夜ともクローズドループ療法を行い、分娩まで継続した。
主要評価項目は、夜間血糖値が目標範囲内(63~140mg/dL[3.5~7.8 mmol/L])にある時間の割合であった。
ベースラインの16例の平均年齢は34.1±4.6歳、平均BMIは29.7±5.7、平均糖化ヘモグロビン値は6.8±0.6%、平均糖尿病罹病期間は23.6±7.2年であった。
夜間目標血糖値達成率が改善、重度低血糖は発現せず
夜間血糖値が目標範囲内の時間の割合は、クローズドループ療法が74.7%であり、SAP療法の59.5%よりも高かった(絶対差:15.2ポイント、95%信頼区間[CI]:6.1~24.2、p=0.002)。また、夜間の平均血糖値は、クローズドループ療法が119mg/dL(6.6mmol/L)と、SAP療法の133mg/dL(7.4mmol/L)に比べ低かった(p=0.009)。
血糖値が目標範囲より低い時間の割合(クローズドループ療法:1.3 vs.SAP療法:1.9%、p=0.28)、インスリン投与量(59.8 vs.58.2U/日、p=0.67)、有害事象(全体で26件、そのうち14件が皮膚反応)の発現率は、2つの治療法に有意な差を認めなかった。
継続期(出産前の入院、陣痛、分娩を含め最長で14.6週)では、血糖値が目標範囲内の時間の割合は68.7%であり、平均血糖値は126mg/dL(7.0mmol/L)であった。
第三者の介助を要する重度の低血糖エピソードは、4週の無作為化期間とその後の昼夜継続期間のいずれにも発現しなかった。
妊娠期間中央値は36.9週であり、帝王切開が15例で行われた。37週未満の分娩は7例であった。胎児の肺成熟のための母体へのグルココルチコイド投与が6例で行われた。
出生時体重中央値は3,588gであった。12例が新生児集中治療室に入室し、新生児低血糖で11例がブドウ糖を投与された。
著者は、「これらの知見は、クローズドループ療法はSAP療法に比べ、低血糖エピソードやインスリン投与量を増加させずに血糖コントロールを改善するとの最近の研究結果を裏付けるものであり、妊婦の血糖コントロールは妊婦以外とほぼ同じであった」とし、「おそらく、妊娠中の厳格な目標血糖値の維持に対する、妊婦の強い動機付けを反映している」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)