早期乳がんの遺伝子診断で過剰な術後化療を回避/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/09/05

 

 遺伝子診断の導入により、臨床リスクが高い乳がん患者の半数近くが、術後の化学療法は不要と判定され、毒性を伴う化学療法による過剰治療の回避につながる可能性があることが、ポルトガル・Champalimaud臨床センターのFatima Cardoso氏らが行ったMINDACT試験で示された。研究の成果はNEJM誌2016年8月25日号に掲載された。早期乳がん患者への術後補助療法の適用は、腫瘍および患者の特性に基づく臨床リスクで決定される。これらの特性を判定する診断ツールのアルゴリズムは、個々の患者の腫瘍の生物学的特性を考慮していないため、多くの患者が過剰治療となり、効果のない治療による毒性のリスクに曝されている可能性があるという。70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)は、早期乳がん女性の臨床アウトカムの予測を改善することが示されている。

遺伝子診断追加の臨床的有用性を無作為化試験で評価
 MINDACT試験は、術後補助化学療法の対象の選択において、標準的な臨床病理学的判定基準に、70遺伝子シグニチャー検査を追加することの臨床的な有用性を前向きに評価する無作為化第III相試験(欧州委員会第6次フレームワークプログラムなどの助成による)。

 2007~2011年に、欧州9ヵ国112施設で患者登録を行った。対象は、年齢18~70歳、組織学的に浸潤性の原発乳がん(Stage T1、T2、切除可能なT3)が確認され、リンパ節転移陰性の女性であった(2009年8月以降は、最大3個の腋窩リンパ節転移のある女性も可とした)。

 ゲノムリスクは、70遺伝子シグニチャーで評価し、臨床リスクの評価には、改訂版Adjuvant! Onlineを用いた。

 双方のリスクが低い患者は、術後補助化学療法が施行されなかったが、両リスクが高い患者には行われた。2つのリスクが一致しない患者は、いずれかのリスクに基づき、化学療法を施行する群と施行しない群に無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、無遠隔転移生存とし、初回遠隔転移の発現または死亡までの期間と定義した。臨床リスクは高いが、ゲノムリスクが低く、化学療法を行わなかった患者において、5年無遠隔転移生存率の95%信頼区間(CI)の下限値が92%(非劣性境界)を上回るかを検討した。

術後補助化学療法なしでも、5年無遠隔転移リスク上昇せず
 6,693例が登録された。年齢は、<35歳が1.8%、35~49歳が31.4%、50~70歳が65.9%、>70歳が0.8%であり、リンパ節転移陰性が79.0%、ホルモン受容体陽性が88.4%、HER2陰性は90.3%であった。

 低臨床リスク/低ゲノムリスク群は2,745例(41.0%)、低臨床リスク/高ゲノムリスク群は592例(8.8%)、高臨床リスク/低ゲノムリスク群は1,550例(23.2%)、高臨床リスク/高ゲノムリスク群は1,806例(27.0%)であった。

 高臨床リスク/低ゲノムリスク群の化学療法非施行例の5年無遠隔転移生存率は、94.7%(95%CI:92.5~96.2)であり、95%CI下限値≧92%を満たした。

 同群の化学療法非施行例と施行例の5年無遠隔転移生存率の絶対差は1.5ポイントであり、非施行例のほうが低かったが、有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.50~1.21、p=0.27)。

 エストロゲン受容体陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性、同陽性のサブグループの無遠隔転移生存率も、同様の結果であった。

 著者は、「70遺伝子シグニチャーを加えることで、臨床リスクは高いがゲノムリスクは低い患者において、5年時の遠隔転移または死亡のリスクを高めることなく、毒性を伴う化学療法を回避できる可能性が示唆された」とまとめ、「これらの知見により、臨床リスクの高い乳がん女性の約46%は、化学療法を必要としない可能性がある」と指摘している。