米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJeffrey L. Saver氏らが、これまでに発表された無作為化試験についてメタ解析を行った結果、大血管虚血性脳卒中の患者に対し、血栓除去療法と薬物療法を早期に行うことで、薬物療法のみを行った場合に比べて、3ヵ月後の障害の程度は有意に低かった。また、血栓除去療法は、症状発症から7.3時間以内に行うことで3ヵ月後のアウトカムがより良好となり、7.3時間以降に実施した場合は、アウトカムについて有意差は認められなかった。第2世代デバイスを用いた血栓除去術の有益性は認められているが、施術時間に関するアウトカムについて詳細は示されていなかった。JAMA誌2016年9月27日号掲載の報告。
3ヵ月後の障害の程度や機能的自立度を比較
研究グループは、2016年7月までに発表された、大血管虚血性脳卒中患者を対象にした、ステント型脳血栓回収機器など第2世代血栓除去デバイスを用いた血栓除去療法に関する、第III相無作為化比較試験についてメタ解析を行った。分析対象としたのは、合計89ヵ所の医療機関を通じて行われた5試験で、被験者総数は1,287例だった。
血栓除去療法+薬物療法を実施した場合と、薬物療法のみの場合についてアウトカムを比較した。主要評価項目は、3ヵ月後の修正Rankinスケール(mRS、0~6)。副次的評価項目は、3ヵ月後の機能的自立度、全死因死亡率、症候性出血性への変化だった。
3ヵ月後mRSスコア、薬物療法群3.6、血栓除去療法群2.9
被験者のうち、血栓除去療法と薬剤療法を行ったのは634例(血栓除去療法群)、薬物療法のみは653例(薬物療法群)だった。被験者の平均年齢は66.5歳、女性は47.0%だった。
血栓除去療法群では、症状発症から動脈穿刺までの時間中央値は238分(四分位範囲:180~302)、再灌流までの時間中央値は286分(同:215~363)だった。
90日後のmRSスコアは、薬物療法群が3.6(95%信頼区間[CI]:3.5~3.8)に対し、血栓除去療法群は2.9(同:2.7~3.1)と、障害の程度は有意に低かった。
血栓除去療法による90日後に障害の程度がより良好である可能性は、症状発症から動脈穿刺までの時間が長くなるほど低下した。同時間が3時間では共通オッズ比は2.79、アウトカムがより良好である確率の絶対差は39.2%だったのに対し、同時間が6時間では、それぞれ1.98、30.2%に、また8時間では1.57、15.7%だった。なお、同時間が7時間18分までは、血栓除去療群が薬物療法群よりアウトカムが有意に良好だった。
血栓除去療法によって十分な再灌流を達成した390例についてみたところ、再灌流が1時間遅れることによって、障害の程度が良好になる可能性は減り(共通オッズ比:0.84、絶対差:-6.7%)、機能的自立度も低下(共通オッズ比:0.81、絶対差:-5.2%)した。しかし、死亡率は同程度だった(オッズ比:1.12[95%CI:0.93~1.34]、絶対差:1.5%[同:-0.9~4.2])。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)