ショックを発症していない重症敗血症患者に対し、ヒドロコルチゾンを用いた補助療法を行っても、2週間以内の敗血症性ショック発症リスクは減少しないことが示された。集中治療室(ICU)内および院内死亡リスクや、180日時点の死亡リスクについても減少しなかった。ドイツ・シャリテ大学のDidier Keh氏らが、380例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、「検討の結果は、ショック未発症の重症敗血症患者に対するヒドロコルチゾン補助療法の適用を支持しないものだった」とまとめている。同療法は「Surviving Sepsis Campaign」において、難治性敗血症性ショックに対してのみ推奨されており、ショック未発症の重症敗血症に対する同療法については議論の的となっていた。JAMA誌オンライン版2016年10月3日号掲載の報告。
14日以内の敗血症性ショックを比較
研究グループは、2009年1月13日~2013年8月27日にかけて、ドイツ国内34ヵ所の医療機関を通じて、重症敗血症で敗血症性ショック未発症の成人380例について、無作為化二重盲検試験を開始した。追跡期間は180日間で、2014年2月23日まで行った。
同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(190例)にはヒドロコルチゾン200mgを5日間注入し、11日目までに徐々に減量・中止し、もう一方の群(190例)にはプラセボを投与した。
主要評価項目は、14日以内の敗血症性ショック。副次的評価項目は、同ショック発症までの期間、ICU内または院内の死亡率、180日死亡率、2次感染症発症率、ウィーニング失敗、筋力低下の発生率、高血糖症(血糖値>150mg/dL)発症率などだった。
敗血症ショック発症率は、いずれの群も21~23%
ITT(intention-to-treat)解析対象者は353例。平均年齢65.0歳、男性が64.9%だった。
敗血症性ショックの発症率は、ヒドロコルチゾン群が21.2%(36/170例)で、プラセボ群が22.9%(39/170例)と、両群で同等だった(群間差:-1.8%、95%信頼区間[CI]:-10.7~7.2、p=0.70)。
敗血症性ショック発症までの期間やICU内・院内死亡率も、有意差はみられなかった。28日死亡率は、ヒドロコルチゾン群8.8%、プラセボ群8.2%(差:0.5%、95%CI:-5.6~6.7、p=0.86)、90日死亡率はそれぞれ19.9%と16.7%(3.2%、-5.1~11.4、p=0.44)、180日死亡率は26.8%と22.2%(4.6%、-4.6~13.7、p=0.32)と、いずれも同等だった。
2次感染の発症率は、ヒドロコルチゾン群21.5% vs.プラセボ群16.9%、ウィーニング失敗は8.6% vs.8.5%、筋力低下30.7% vs.23.8%、高血糖症90.9% vs.81.5%だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)