タウ凝集阻害薬の軽度~中等度アルツハイマー病への効果/Lancet

ロイコメチルチオニニウムビス(LMTM)の第III相臨床試験の結果は否定的なものであり、軽度~中等度アルツハイマー病に対するLMTMのアドオン療法の有益性は示されなかった。カナダ・ダグラス精神保健大学研究所のSerge Gauthier氏らが、LMTMの安全性および有効性を評価する15ヵ月間の無作為化二重盲検比較試験の結果、報告した。先行研究で、塩化メチルチオニニウム(=メチレンブルー:酸化型メチルチオニニウムの塩化物)は、タウ凝集阻害作用を有し、アルツハイマー病に対し単独療法で有効である可能性が示唆されている。LMTMはメチルチオニニウムの安定還元体で、塩化メチルチオニニウムより溶解性や吸収性が良好で、塩化メチルチオニニウムと同様、in vitroおよび遺伝子導入マウスモデルにおいて選択的タウ凝集阻害剤として作用することが確認されていた。なお、軽度のアルツハイマー病患者を対象としたLMTMの18ヵ月間の臨床試験の結果がまもなく報告される予定である。Lancet誌オンライン版2016年11月15日号掲載の報告。
LMTM併用による認知機能およびADLの変化を評価
本試験は、16ヵ国(欧州、北米、アジア、ロシア)の大学および民間研究病院115施設において実施された。対象は、90歳未満の軽度~中等度アルツハイマー病患者で、他のアルツハイマー病治療薬を併用している患者も組み込まれた。ただし、メトヘモグロビン血症に関する警告のある薬剤を服用中の患者は除外された。対象患者は、LMTMを75mg1日2回投与群(75mg群)、同125mg1日2回投与群(125mg群)または対照群(尿または便の変色に関して盲検化を維持するためLMTMを4mg1日2回投与)に、疾患重症度・地域・アルツハイマー病治療薬併用の有無・PET撮影の可否で層別化して3対3対4の割合で無作為割り付けされた。
主要評価項目は、アルツハイマー病評価尺度の認知機能スコア(ADAS-Cog)およびアルツハイマー病共同研究日常生活動作質問票スコア(ADCS-ADL)の、65週時におけるベースラインからの変化であった。修正intention-to-treat集団を対象として解析が行われた。
LMTMの有効性は確認されず
2013年1月29日~2014年6月26日に、891例が無作為割り付けされた(75mg群268例、125mg群266例、対照群357例)。主要評価項目に関して、どの群も治療効果は認められなかった。ADAS-Cogスコアの変化量は、対照群6.32(354例、95%信頼区間[CI]:5.31~7.34)に対し、75mg群-0.02(257例、95%CI:-1.60~1.56、p=0.9834)、125mg群-0.43(250例、95%CI:-2.06~1.20、p=0.9323)であった。ADCS-ADLスコアの変化量は、それぞれ-8.22(95%CI:-9.63~-6.82)、-0.93(95%CI:-3.12~1.26、p=0.8659)、-0.34(95%CI:-2.61~1.93、p=0.9479)であった。
75mg群および125mg群の安全性については、消化器および泌尿器系の有害事象の頻度が高く、投与中止理由としても最も多かった。臨床検査値異常で最も頻度が高かったのは、臨床的に重要ではないヘモグロビン濃度の用量依存的減少であった。アミロイド関連画像異常が確認された患者は1%未満(8/885例)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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