緩和ケアの患者・介護者それぞれへの効果は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/12/05

 

 末期患者への緩和ケアは、患者QOLや症状負担を改善する可能性があるが、介護者の転帰への効果は明確ではないことが、米国・ピッツバーグ大学のDio Kavalieratos氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22・29日号に掲載された。重篤な病態の患者のQOL改善は国際的な優先事項とされ、緩和ケアの焦点は、QOLの改善と、患者および家族の苦痛の軽減に置かれている。米国では、65%以上の病院が緩和ケアの入院プログラムを持ち、地域および外来ベースの緩和ケア提供モデルも増加しているが、実際の効果はよく知られていないという。

23試験のメタ解析で、QOL、症状負担、生存などを評価
 研究グループは、末期患者への緩和ケアが、患者およびその介護者のアウトカムに及ぼす影響を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。

 2016年7月までに医学データベース(MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Cochrane CENTRAL)に登録された文献を検索した。末期的病態の成人患者への緩和ケアによる介入を評価した無作為化試験を対象とした。

 2人のレビュワーが別個にデータを抽出した。すべての試験について記述的統合(narrative synthesis)を行った。ランダム効果モデルによるメタ解析で、QOL、症状負担、生存などを評価した。

 QOLは、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-palliative care scale (FACIT-Pal)に換算した。0~184点(点数が高いほどQOLが良好)でスコア化し、臨床的に意義のある最小変化量(minimal clinical important difference:MCID)は9点とした。

 症状負担は、エドモントン症状評価システム(ESAS)に換算した。0~90点(点数が高いほど負担が大きい)でスコア化し、MCIDは5.7点であった。

 43件(56論文)の無作為化試験に参加した患者1万2,731例(平均年齢67歳)と介護者2,479例が記述的統合の対象となった。メタ解析には23試験(30論文)が含まれた。

生存は改善せず、エビデンスの質は低い
 35件の試験は対照として通常ケアを設定していた。14試験は外来、18試験は在宅、11試験は入院患者を対象とし、介護者の評価は15試験で行われていた。

 30試験にはがん患者が、14試験には心不全患者が含まれた。HIV患者に限定した試験のほか、COPD、間質性肺疾患、運動ニューロン疾患、末期腎不全、脳卒中、認知症の患者を含む試験もあった。

 1~3ヵ月の患者QOLは、緩和ケアにより、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善効果が達成された(15試験、標準化平均差[SMD]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.08~0.83、FACIT-Pal平均差:11.36、異質性検定:I2=94.8%)。4~6ヵ月の患者QOLには有意差を認めなかった(12試験、SMD:0.12、95%CI:-0.03~0.28、I2=61.4%)。

 1~3ヵ月の症状負担も、緩和ケアにより、有意で臨床的に意義のある改善が得られた(10試験、SMD:-0.66、95%CI:-1.25~-0.07、ESAS平均差:-10.30、I2=96.1%)。4~6ヵ月の症状負担にも有意な改善効果が認められた(6試験、SMD:-0.18、95%CI:-0.31~-0.05、I2=0.0%)。

 バイアスのリスクが低い試験に限定した解析では、1~3ヵ月の緩和ケアとQOLの関連は減弱したものの有意差を保持していた(5試験、SMD:0.20、95%CI:0.06~0.34、FACIT-Pal平均差:4.94、I2=0.0%)のに対し、症状負担との関連では有意な差はみられなかった(4試験、SMD:-0.21、95%CI:-0.42~0.00、ESAS平均差:-3.28、I2=42.1%)。

 緩和ケアと生存には関連を認めなかった(7試験、ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.69~1.17、I2=75.3%)。また、緩和ケアは、事前ケア計画(advance care planning)や、患者および介護者の満足度を改善し、医療資源の活用を抑制した。一方、介護者のアウトカムは試験間で一貫性がなかった。高い異質性のため、本研究のエビデンスの質は不良であった。

 著者は、「改善効果を認めたアウトカムの多くは、バイアスのリスクが低い試験に限定すると有意差が消失した」とし、「最終的には、患者に加え介護者を支援する至適な緩和ケア提供モデルの確立が必要である」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)