米国のジカウイルス感染妊婦の胎児および乳幼児の6%に、ウイルス感染関連の先天性異常を認め、感染が妊娠初期の場合は11%に上り、とくに脳異常や小頭症が多いことが、米国疾病対策予防センター(CDC)のMargaret A Honein氏らUS Zika Pregnancy Registry Collaborationの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2016年12月15日号に掲載された。妊娠初期のジカウイルス感染妊婦の胎児/乳幼児における小頭症のリスクは、仏領ポリネシアのデータでは約1%、ブラジル・バイア州では1~13%と報告されている。2009~13年に米国で実施されたジカウイルス感染がない妊婦の調査では、小頭症の発症率は生児出産1万人当たり約7件であったが、感染妊婦におけるリスクの程度は知られていなかった。
感染妊婦442例で先天性異常のリスクを検討
研究グループは、母親の妊娠中のジカウイルス感染時期別の、胎児/乳幼児における先天性異常の発症率および母親の症状を調査した。
US Zika Pregnancy Registry(USZPR)に、2016年1月15日~9月22日にアメリカ大陸とハワイ島から登録された、ジカウイルス感染が検査で確認された母親とその胎児、乳幼児のデータを解析した。
ジカウイルス関連の先天性異常として、小頭症を伴う脳異常、これを伴わない脳異常、神経管欠損および他の早期脳形成異常、眼異常、他の中枢神経系異常について検討を行った。
ジカウイルス感染が確認された442例の妊婦が解析の対象となった。年齢中央値は28歳(範囲:15~50歳)だった。271例(61%)は無症状で、167例(38%)に症状が認められたが、4例(1%)は症状に関する情報が得られなかった。
症状の有無でリスクに差ない、妊娠中期~後期感染で発症なし
ジカウイルス関連の先天性異常は26例(6%、95%信頼区間[CI]:4~8%)の胎児/乳幼児に認められた。このうち、21例が395例の生児出産の乳幼児、5例が47例の妊娠損失の胎児であった。また、16例(6%、95%CI:4~9)は271例の妊娠中に無症状の妊婦、10例(6%、95%:3~11)は167例の有症状の妊婦の胎児/乳幼児であった。
26例の先天性異常を有する胎児/乳幼児のうち、4例は小頭症で、神経画像検査は行われていなかった。また、14例は小頭症を伴う脳異常、4例は小頭症を伴わない脳異常であった。脳異常には、脳内石灰化、脳梁異常、皮質形成異常、脳萎縮、脳室拡大、水頭症、小脳異常が含まれた。
小頭症は、全体で4%(18/442例)の乳幼児に認められた。母親に症状がみられるか、妊娠初期(第1三半期および妊娠前後)にウイルスに曝露した85例の胎児/乳幼児のうち、先天性異常が認められたのは9例(11%、95%CI:6~19%)であった。また、妊娠中のウイルス曝露が妊娠第2、3三半期の母親では、胎児/乳幼児に先天性異常はみられなかった。
著者は、「これらの知見は、ジカウイルスに曝露したすべての妊婦に対するスクリーニングの重要性を支持するもの」としている。
(医学ライター 菅野 守)