小児がんサバイバー、放射線治療減少で新生物リスク低下/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/03/15

 

 1990年代に診断を受けた小児がんサバイバーの初回診断後15年時の悪性腫瘍のリスクは、上昇してはいるものの、1970年代に診断されたサバイバーに比べると低くなっており、その主な要因は放射線治療の照射線量の減少であることが、米国・ミネソタ大学のLucie M Turcotte氏らの調査で明らかとなった。同氏らは、「現在も続けられている長期の治療毒性の軽減に向けた取り組みが、サバイバーの新生物罹患リスクの低減をもたらしている」と指摘する。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。

2万3,603例を治療年代別に後ろ向きに検討
 研究グループは、小児がんサバイバーにおいて、時代による治療量の変化と新生物のリスクの関連を定量的に評価するレトロスペクティブな多施設共同コホート研究を行った(米国国立先進トランスレーショナル科学センターなどの助成による)。

 対象は、1970~99年に米国およびカナダの小児病院で診断を受けた21歳未満の小児がん患者で、5年以上生存し、2015年12月にフォローアップが可能であった者とした。治療年代別の新生物の15年累積罹患率、累積疾病負担、悪性腫瘍の標準化罹患比(SIR:実測罹患数/期待罹患数)、5年ごとの相対罹患率(RR)の評価を行った。

 2万3,603例が解析の対象となった。治療時期は1970年代(1970~79年)が6,223例、1980年代(1980~89年)が9,430例、1990年代(1990~99年)は7,950例であった。

悪性腫瘍累積罹患率:2.1%→1.7%→1.3%
 初回診断時の平均年齢は7.7(SD 6.0)歳、女児が46.3%であった。初回診断名は、急性リンパ芽球性白血病(35.1%)が最も多く、次いでホジキンリンパ腫(11.1%)、星状細胞腫(9.6%)、ウィルムス腫瘍(8.0%)、非ホジキンリンパ腫(7.2%)、神経芽細胞腫(6.8%)の順であった。

 治療年代別の平均フォローアップ期間は、70年代が27.6年、80年代が21.1年、90年代は15.7年であった。全体の平均フォローアップ期間20.5年(37万4,638人年)の間に、1,639例が3,115個の新生物を発症し、そのうち1,026個が悪性腫瘍、233個が良性髄膜腫、1,856個が非黒色腫皮膚がんであった。最も頻度の高い悪性腫瘍は、乳がんおよび甲状腺がんであった。

 放射線治療の施行率は、70年代の77%から90年代には33%まで低下し、照射線量中央値は70年代の30Gy(IQR:24~44)から90年代には26Gy(IQR:18~52)まで減少した。また、アルキル化薬やアンスラサイクリン系薬の使用率は経時的に上昇したが、用量中央値は減少した。プラチナ製剤の使用率は増加したが、エピポドフィロキシンは80年代には累積用量中央値が増加したが、90年代には減少した。

 新生物の累積罹患率は、70年代が2.9%、80年代が2.4%、90年代は1.5%と、経時的に有意に低下した(70 vs.80年代:p=0.02、70 vs.90年代:p<0.001、80 vs.90年代:p<0.001)。サバイバー100例当たりの累積疾病負担は、70年代が3.6、80年代が2.8、90年代は1.7であり、やはり経時的に有意に軽減した(同p=0.02、p<0.001、p=0.001)。

 悪性腫瘍の累積罹患率は、90年代が1.3%と、80年代の1.7%(p<0.001)、70年代の2.1%(p<0.001)に比し有意に低かった。同様の傾向が、非黒色腫皮膚がんにもみられたが、髄膜腫には認めなかった。

 基準となる背景因子(化学療法非施行、脾臓摘出術、放射線治療、男性、28歳)のサバイバーにおける1,000人年当たりの絶対罹患率は、悪性腫瘍が1.12、髄膜腫が0.16、非黒色腫皮膚がんは1.71であった。

 悪性腫瘍のSIRは、到達年齢が上がるにしたがって3つの治療年代とも低下した。性、診断時年齢、到達年齢で補正した新生物のRRは、5年経過するごとに有意に低下し(RR:0.81、95%CI:0.76~0.86、p<0.001)、悪性腫瘍(0.87、0.82~0.93、p<0.001)、髄膜腫(0.85、0.75~0.97、p=0.03)、非黒色腫皮膚がん(0.75、0.67~0.84、p<0.001)のRRも有意に低くなった。

 媒介分析では、放射線治療の照射線量の変化は、治療年代関連の新生物罹患率の低下の主要な寄与因子であり、経時的な新生物罹患率低下と有意な関連を示す治療変量の唯一の構成要素であった。

(医学ライター 菅野 守)