中国における粒子状大気汚染の死亡への影響を調べた大規模調査の報告が、中国疾病予防センター(CCDC)のPeng Yin氏らにより発表された。38の大都市の人口2億人超について調べたもので、疾患別死亡でみると、呼吸器・循環器疾患の死亡への影響が他の疾患死への影響と比べてより大きく、60歳未満と比べて60歳以上のほうが粒子状大気汚染の死亡への影響を強く受けていることが示された。また、そうした影響は都市間でばらつきがみられ、人口規模の大きな都市のほうが影響は小さく、南部にある都市と比べると北部にある都市のほうが均等に影響を受けていることも明らかにされた。これまで中国では大気汚染の影響への関心は高かったが、複数都市を対象とした分析調査はほとんど行われていなかったという。BMJ誌2017年3月14日号掲載の報告。
2010~13年の死亡記録35万例超のデータを分析
調査は中国の大都市における、粒子状大気汚染(粒子直径10μm未満、またはPM
10)の死亡への短期的影響を推定すること、および都市間の影響の不均一性を探索することを目的とし、一般化されたラグ構造線形モデルを用いて時系列データを分析した。
中国の27行政区38都市(住民2億人超)を対象とし、CCDCのDisease Surveillance Point Systemから得た、2010年1月1日~2013年6月29日の38都市の死亡記録35万638例(男性20万912例、女性14万9,726例)について分析した。
主要評価項目は、1日当たりの全死因死亡数、呼吸器・循環器疾患死亡数、非呼吸器・循環器疾患死亡数で、粒子状大気汚染と死亡の関連を推定するために用いたそれぞれの人口統計学的集団で調べた。
PM10濃度が高い都市のほうが影響はわずかだが低下
調査対象期間中の、日中のPM
10濃度は、全調査都市平均で92.9μg/m
3(SD 46.3)であった。最も高かったのは、新疆ウイグル自治区のウルムチ市で136.0μg/m
3、最も低かったのは河北省の秦皇島市で66.9μg/m
3であった。平均して1日当たりの死亡は8.6例で、うち呼吸器・循環器疾患死亡は4.4例であった。
結果、日中のPM
10濃度が10μg/m
3上昇で、1日当たりの死亡数は0.44%(95%信頼区間[CI]:0.30~0.58%)増大することが示された。また、前日からの2日間でPM
10値が3分の1および3分の2低下しても、死亡増大との関連は統計的に有意なままであった。
PM
10の呼吸器・循環器疾患死亡への影響は、10μg/m
3当たり0.62%(0.43~0.81%)と推定された。他の疾患死では0.26%(0.09~0.42%)であった。
PM
10曝露の影響は、男性よりも女性のほうが大きく、また年齢別では60歳以上のほうが60歳未満と比べて粒子状大気汚染に対して脆弱であることも示された。
PM
10の影響は都市間でばらつきがあり、PM
10濃度が高い都市のほうが影響はわずかだが低かった。
(ケアネット)