2001年からの10年間に米国食品医薬品局(FDA)で承認を受けた222種の新規治療薬のうち、安全性への懸念から、市販開始後に販売中止や枠組み警告の追加などに至ったものが32%あったことが明らかにされた。なかでも、生物学的製剤や精神疾患治療薬、迅速承認や当局承認締め切り間際に承認を受けたものでその発生率が有意に高く、著者は「これらの新しい治療薬は、生涯にわたる継続的な安全性モニタリングが必要であることを強調するものである」と述べている。米国・ブリガム・ウィメンズ病院のNicholas S. Downing氏らによる検討で、JAMA誌2017年5月9日号に発表された。
販売中止、枠組み警告など市販後安全性イベントを調査
研究グループは2001年1月1日~2010年12月31日にかけて、FDAで承認を受けた新規治療薬を対象に調査を行った。
主要評価項目は、(1)安全性に関する懸念から販売中止、(2)市販後調査期間中にFDAが枠組み警告追加を指示、(3)FDAが安全性情報を発布、これら3点の複合とした。
市販後安全性イベント、生物学的製剤で約2倍、精神疾患治療薬で約3.8倍
対象期間中にFDAが承認した新規治療薬は222種だった(医薬品183、生物学的製剤39)。追跡期間中央値11.7年に報告された市販後安全性イベントは、123件(販売中止3件、枠組み警告追加61件、安全性情報発布59件)で、対象となった新規治療薬の数はおよそ3分の1に当たる71種(32.0%)だった。
FDAの承認を受けてから最初の市販後安全性イベント発生までの期間中央値は、4.2年(四分位範囲:2.5~6.0)だった。また、承認を受けてから10年の間に、何らかの市販後安全性イベントが報告された新規治療薬の割合は、30.8%(95%信頼区間[CI]:25.1~37.5)だった。
多変量解析の結果、市販後安全性イベントは生物学的製剤でより発生頻度が高く、発生率比(IRR)は1.93(95%CI:1.06~3.52、p=0.03)だった。また、精神疾患治療薬(IRR:3.78、95%CI:1.77~8.06、p<0.001)、迅速承認を受けたもの(同:2.20、1.15~4.21、p=0.02)、当局承認締め切り間際の承認(同:1.90、1.19~3.05、p=0.008)でより高頻度だった。
一方で、審査期間が200日未満だったものは、市販後安全性イベント発生頻度が低かった(同:0.46、0.24~0.87、p=0.02)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)