局所進行・転移性前立腺がんの治療において、アンドロゲン除去療法(ADT)にアビラテロン酢酸エステル(商品名:ザイティガ)(以下、アビラテロン)+プレドニゾロンを併用すると、ADT単独に比べ全生存(OS)率および治療奏効維持生存(failure-free survival:FFS)率が有意に改善することが、英国・バーミンガム大学のNicholas D. James氏らが行ったSTAMPEDE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年6月3日号に掲載された。
アビラテロン+プレドニゾロンの早期併用の有効性を検討
アビラテロンは、精巣や副腎、前立腺の腫瘍組織におけるアンドロゲンの産生に重要な役割を担う酵素であるCYP17を選択的かつ不可逆的に阻害する。CYP17の阻害とADT(精巣摘除術、GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト)の併用は、外科的去勢術単独やGnRHアナログ単独よりも効果的にアンドロゲンを除去するという。
研究グループは、長期ADTを開始した男性におけるアビラテロン+プレドニゾロンの早期併用の有効性を検討した(英国がん研究所などの助成による)。
対象は、新規に診断された転移性、リンパ節転移陽性、高リスク局所進行性の前立腺がん患者、または根治的前立腺摘除術あるいは放射線療法後に再発した高リスク病変を有する前立腺がん患者であり、割り付け前の12週以内に長期ADTの開始が予定されている者とした。
被験者は、ADTにアビラテロン(1,000mg/日)+プレドニゾロン(5mg/日)を併用する群(アビラテロン併用群)またはADT単独群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。ADTは2年以上行うこととし、非転移性病変の患者のうちリンパ節転移陰性例は放射線治療を必須とし、陽性例には奨励とした。
アビラテロン併用群に960例、単独群に957例
転移性病変および放射線治療が予定されていない非転移性病変の患者は、画像評価・臨床評価・前立腺特異抗原(PSA)で病勢進行と判定されるまで治療を継続し、放射線治療が予定されている非転移性病変の患者は、2年間または病勢進行のいずれかまで治療が継続された。
主要評価項目はOS率、中間的主要評価項目はFFS(初回治療不成功[treatment failure]までの期間)であった。治療不成功は、PSAで評価した生化学的治療不成功、局所・リンパ節・遠隔転移病変の進行、前立腺がん死と定義した。
2011年11月~2014年1月に、英国の111施設とスイスの5施設に1,917例が登録され、アビラテロン併用群に960例が、単独群には957例が割り付けられた。
ベースラインの全体の年齢中央値は67歳、PSA中央値は53ng/mLであった。転移性病変が52%、リンパ節転移が陽性または不明の非転移性病変が20%、リンパ節転移陰性の非転移性病変が28%で、95%が新規に診断された患者であった。フォローアップ期間中央値は40ヵ月だった。
アビラテロン併用群の3年OS率は有意に優れた
アビラテロン併用群の184例、単独群の262例が死亡した。3年OS率はそれぞれ83%、76%であり、アビラテロン併用群が有意に優れた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.52~0.76、p<0.001)。また、転移性病変(0.61、0.49~0.75)では、アビラテロン併用群のOS率が有意に良好であったが、非転移性病変(0.75、0.48~1.18)では両群に差はみられなかった。
アビラテロン併用群で248件、単独群で535件の治療不成功イベントが発生した。3年FFS率はそれぞれ75%、45%であり、アビラテロン併用群が有意に良好であった(HR:0.29、95%CI:0.25~0.34、p<0.001)。また、転移性病変(0.31、0.26~0.37)および非転移性病変(0.21、0.15~0.31)のいずれにおいても、アビラテロン併用群のFFS率が有意に優れた。
3年無増悪生存(PFS)率は、アビラテロン併用群が80%、単独群は62%(HR:0.40、95%CI:0.34~0.47、p<0.001)、3年時に症候性骨関連事象(SSE)がみられない患者の割合は、それぞれ88%、78%(0.46、0.37~0.58、p<0.001)であり、いずれもアビラテロン併用群が有意に優れた。
Grade 3~5の有害事象は、アビラテロン併用群の47%(Grade 5は9例)、単独群の33%(Grade 5は3例)に認められた。内訳は、内分泌障害がそれぞれ14%、14%、心血管障害が10%、4%、筋骨格系障害が7%、5%、肝障害が7%、1%、消化器障害が5%、4%などであった。
なお、本研究にはmultigroup, multistage(multiarm, multistage[MAMS]ともいう) platform designと呼ばれる試験デザインが用いられた。著者は、「単一の試験プラットフォーム内で多数の課題への取り組みが可能であり、対照群を効率的に活用できる。15年で、1つのプロトコルによって10以上の主要課題への答えが得られる予定である」としている。
(医学ライター 菅野 守)