経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動(AF)患者において、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)+P2Y12阻害薬による2剤併用抗血栓療法は、ワルファリン+P2Y12阻害薬+アスピリンの3剤併用抗血栓療法と比較して、出血リスクは低く、血栓塞栓イベントリスクは有意差がないことが確認された。米国・ベイム臨床研究所のChristopher P. Cannon氏らが、日本を含む41ヵ国414施設で実施された国際共同無作為化非盲検比較試験「RE-DUAL PCI試験」の結果を報告した。ワルファリン+2剤併用抗血小板薬を用いた3剤併用抗血栓療法は、PCI後のAF患者に対する標準治療であるが、出血リスクが高く新たな治療戦略が求められていた。NEJM誌オンライン版2017年8月27日号掲載の報告。
ダビガトラン2用量の2剤併用と、ワルファリンを含む3剤併用の3群で比較
RE-DUAL PCI試験の対象は、ステント留置を伴うPCIを施行した非弁膜症性AF患者2,725例で、ダビガトラン110mg×1日2回+P2Y12阻害薬群(110mg併用群)、ダビガトラン150mg×1日2回+P2Y12阻害薬群(150mg併用群)、ワルファリン+P2Y12阻害薬+アスピリン群(3剤併用群)のいずれかに無作為に割り付け(米国以外の高齢者は110mg併用群と3剤併用群の2群に無作為化)、6ヵ月以上追跡した。P2Y12阻害薬はクロピドグレルまたはチカグレロルとし、アスピリン(1日100mg以下)はベアメタルステントの場合は1ヵ月後、薬剤溶出ステントの場合は3ヵ月後に中止した。
主要エンドポイントは、大出血または臨床的に問題となる出血イベント(ISTH出血基準)。主な副次エンドポイントは、有効性の複合エンドポイント(血栓塞栓イベント[心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症]、死亡および予定外の再血行再建術)であった。副次エンドポイントについては、ダビガトラン両群を合わせた2剤併用群の、3剤併用群に対する非劣性について検証した。
2剤併用のほうが出血リスクは低く、血栓塞栓イベントリスクに差はなし
平均追跡期間14ヵ月における、大出血または臨床的に問題となる出血イベントの発生率は、3剤併用群26.9%に対し、110mg併用群は15.4%であった(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.42~0.63、非劣性のp<0.001、優越性のp<0.001)。150mg併用群(高齢者は米国からの参加被験者のみ)は20.2%で、同群に対応する3剤併用群は25.7%であった(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、非劣性のp<0.001)。
有効性の複合エンドポイントの発生率は、2剤併用群13.7%、3剤併用群13.4%であった(HR:1.04、95%CI:0.84~1.29、非劣性のp=0.005)。重篤な有害事象の発現頻度について有意な群間差は確認されなかった。
〔9月12日 記事の一部を修正いたしました〕
(医学ライター 吉尾 幸恵)