待機的大腿骨頸部・膝関節形成術を受ける高齢者の周術期ワルファリン療法について、遺伝子型ガイド下投与は臨床的ガイド下投与と比べて、複合リスク(大出血、INR 4以上、静脈血栓塞栓症、死亡)の発生を減少させたことが示された。米国・ワシントン大学のBrian F. Gage氏らによる無作為化試験の結果で、著者は「さらなる試験で、ワルファリンの個別化投与の費用対効果について確認する必要がある」とまとめている。高齢患者へのワルファリン使用は、他の薬物よりも、薬物関連の緊急部門受診で頻度が高い。遺伝子型ガイド下のワルファリン投与が、そうした有害事象を回避可能なのかは明らかになっていなかった。JAMA誌2017年9月26日号掲載の報告。
遺伝子型ガイド下 vs.臨床的ガイド下の無作為化試験で有害事象発生を評価
研究グループは、遺伝子型ガイド下投与がワルファリン導入の安全性を改善するかを調べる、Genetic Informatics Trial of Warfarin to Prevent Deep Vein Thrombosis(GIFT試験)を米国の医療施設6ヵ所で行った。対象者は、待機的大腿骨・膝関節形成術を受けワルファリン投与を開始する65歳以上の患者。被験者の遺伝子多型(
VKORC1-1639G>A、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP4F2 V433M)を調べ、2×2要因配置法にて、1~11日目のワルファリン投与(目標INRは1.8または2.5)を遺伝子型ガイド下で行う群、または臨床的ガイド下で行う群に無作為に割り付けた。被験者と試験担当医は、ワルファリンの推奨用量は認識していたが、試験の割り付けと遺伝子型については盲検化された。
主要エンドポイントは、大出血、INR 4以上、静脈血栓塞栓症、死亡の複合。被験者は関節形成術から約1ヵ月後に、下肢部のduplex超音波検査を受けた。
試験登録は2011年4月に始まり、被験者は90日間のフォローアップを受けた。最終フォローアップは2016年10月であった。
主要複合エンドポイント発生の絶対差3.9%、相対比率は0.73
1,650例(平均年齢は72.1歳[SD 5.4]、女性63.6%、白人91.0%)が無作為化を受け、831例が遺伝子型ガイド下群に、819例が臨床的ガイド下群に割り付けられた。ワルファリン投与を少なくとも1回受けて試験を完了したのは、1,597例(96.8%)であった(遺伝子型ガイド下群808例、臨床的ガイド下群789例)。
1つ以上のエンドポイント発生が認められたのは、遺伝子型ガイド下群87例(10.8%)に対し、臨床的ガイド下群は116例(14.7%)であった(絶対差:3.9%[95%信頼区間[CI]:0.7~7.2]、p=0.02/相対比率[RR]:0.73[95%CI:0.56~0.95])。
各エンドポイントの発生は、大出血が遺伝子型ガイド下群2例 vs.臨床的ガイド下群8例(RR:0.24、95%CI:0.05~1.15)、INR 4以上は56例 vs.77例(RR:0.71、95%CI:0.51~0.99)、静脈血栓塞栓症は33例 vs.38例(RR:0.85、95%CI:0.54~1.34)、死亡は報告がなかった。
(ケアネット)