大腿骨骨折手術を受けた成人患者において、待機時間が長いと30日死亡およびその他の合併症のリスクが増大することが明らかにされた。カナダ・トロント大学のDaniel Pincus氏らによる住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果で、待機時間24時間が、リスクが高まる閾値と定義される可能性が示唆されたという。世界中で、大腿骨骨折手術の待機時間は死亡と関連しており、ケアの質の指標として用いられているが、合併症に結び付く待機時間については議論の的となっていた。JAMA誌2017年11月28日号掲載の報告。
オンタリオ州72病院で手術を受けた4万2,230例について分析
研究グループは、合併症リスクが増大する前に大腿骨骨折手術を行うべき至適な時間帯を特定するために、住民ベースの待機時間データを用いて検討を行った。
2009年4月1日~2014年3月31日に、カナダ・オンタリオ州の72病院で同手術を受けた成人を対象とした。待機時間でみた各合併症の発生率を、リスク補正後の制限3次スプラインモデルで描出し、合併症が増大し始めた変曲点(時間)を用いて、手術実施が早期と定義されるのか、待機的と定義されるのかを調べた。また、この定義の頑健さを評価するために、傾向スコアで適合した早期手術群と待機的手術群でアウトカムの比較を(%でみた絶対リスク差[%RD]を95%信頼区間[CI]とともに用いて)行った。
待機時間は、病院到着から手術までの時間と定義。主要アウトカムは、30日以内の死亡率で、副次アウトカムは、死亡またはその他の内科的な合併症(心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、肺炎)の複合などであった。
試験適格基準を満たした大腿骨骨折患者は4万2,230例。平均年齢(SD)80.1(10.7)歳、女性が70.5%であった。
30日死亡率、合併症発生率ともに、24時間を過ぎてから手術を受けた群で有意に高率
30日時点の死亡率は、全体で7.0%であった。
待機時間が24時間より長い場合、考えられる合併症リスクはいずれも増大が認められた。
30日死亡リスクは、24時間を過ぎてから手術を受けた待機的手術群(1万3,731例)が、傾向スコアで適合した24時間以内に手術を受けた早期手術群(1万3,731例)と比較して有意に高かった。死亡件数はそれぞれ898例(6.5%)vs.790例(5.8%)で、%RDは0.79(95%CI:0.23~1.35、p=0.006)であった。また、合併症複合アウトカムの発生も待機的手術群が有意に高く、1,680件(12.2%)vs.1,383件(10.1%)、%RDは2.16(95%CI:1.43~2.89、p<0.001)であった。
(ケアネット)