急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の管理では機械換気が重要とされ、多くの場合鎮静を要するが、至適な鎮静法は依然として不明だという。フランス・Universite Clermont AuvergneのMatthieu Jabaudon氏らSESAR Trial Investigatorsは「SESAR試験」において、中等症~重症のARDS患者では、プロポフォール静脈内投与と比較してセボフルラン吸入による鎮静は、28日の時点での換気を必要としない日数(無換気日数)が少なく、90日生存率が低いことを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年3月18日号に掲載された。
フランスの無作為化第III相試験
SESAR試験は、ARDS患者の鎮静におけるセボフルラン吸入の有効性と安全性の評価を目的とする医師主導型の非盲検評価者盲検無作為化第III相試験であり、2020年5月~2023年10月にフランスの37の集中治療室(ICU)で患者を登録した(French Ministry of Healthなどの助成を受けた)。
年齢18歳以上の中等症~重症の早期ARDS患者(PaO
2/吸入酸素分画<150mmHg、呼気終末陽圧≧8cm H
2Oと定義)を対象とした。これらの患者を、鎮静管理としてセボフルラン吸入療法を受ける群(介入群)またはプロポフォール静脈内投与療法を受ける群(対照群)に無作為に割り付け、最長で7日間投与した。
主要エンドポイントは28日までの無換気日数とし、主な副次エンドポイントは90日生存率であった。
無換気日数、生存率ともに不良
687例(平均[SD]年齢65[12]歳、女性30%)を登録し、セボフルラン群に346例、プロポフォール群に341例を割り付けた。総鎮静期間中央値は両群とも7日間(四分位範囲[IQR]:4~7)であった。
28日までの無換気日数は、セボフルラン群0.0日(IQR:0.0~11.9)、プロポフォール群0.0日(0.0~18.7)であり、セボフルラン群で短かった(群間差中央値:-2.1[95%信頼区間[CI]:-3.6~-0.7]、標準化ハザード比[HR]:0.76[95%CI:0.50~0.97])。
また、90日生存率は、セボフルラン群47.1%、プロポフォール群55.7%と、セボフルラン群で低かった(HR:1.31[95%CI:1.05~1.6])。
7日死亡率、ICU非入室日数も劣る
4つの副次エンドポイントのうち、セボフルラン群はプロポフォール群と比較して、7日死亡率が高く(19.4%vs.13.5%、相対リスク:1.44[95%CI:1.02~2.03])、28日までのICUに入室していなかった日数が少なかった(日数中央値:0.0日[IQR:0.0~6.0]vs.0.0[0.0~15.0]、群間差中央値:-2.5日[95%CI:-3.7~-1.4])。
著者は、「セボフルラン群における臨床アウトカムの悪化を説明する仮説がいくつか考えられ、たとえば長期使用と急性腎障害の増加の関連が知られていることから、その影響の可能性も考慮する必要があるだろう」「吸入鎮静法は、ARDSやそのリスクのあるICU患者において注目を集めているため、今回の知見は臨床的に重要な意味を持つ可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)