心臓デバイス装着例へのMRI検査の安全性/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/01/15

 

 米国では、心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)を使用中の患者は、デバイスが米国食品医薬品局(FDA)の規定する基準を満たさない限り、安全上の懸念からMRI検査を受けられないことが多く、FDA基準を満たすデバイスは「MRI-conditional(条件付きでMRI可能)」と呼ばれる。米国・ペンシルベニア大学のSaman Nazarian氏らは、このような条件を満たさず、FDAによりMRI禁忌とされる従来の心臓デバイス(レガシー・デバイス)の装着例で、MRI検査を受けた患者を前向きに調査し、臨床的に問題となる有害事象は発現していないと明らかにした。NEJM誌2017年12月28日号掲載の報告。

有害事象、デバイスのパラメータの変化を検討
 研究グループは、従来の心臓ペースメーカーまたはICD(レガシー・デバイス)を装着した患者におけるMRI検査の安全性を評価するプロスペクティブな非無作為化試験を行った(ジョンズ・ホプキンス大学と米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。

 対象は、心臓ペースメーカーまたはICDを装着し、プライマリケア医および専門医によってMRI検査(1.5テスラ)が必要と判定され、2003年2月~2015年1月に試験に登録された患者であった。ペーシング・モードは、ペーシング依存の患者は非同期モードとし、それ以外の患者はデマンド・モードとした。頻脈性不整脈の治療機能は無効に設定した。

 アウトカムは有害事象およびデバイスのパラメータの変動とした。MRI検査の直後に評価した有害事象には、ジェネレータの故障、パワーオン・リセット(バックアップ・モードへの自動的なリセット)、システムの更新やプログラミングの変更を要するペーシング閾値やセンシングの変化、バッテリーの消耗、心不整脈などが含まれた。デバイス・パラメータは、P波アンプリチュード(振幅)、右室および左室のR波アンプリチュード、心房および右室、左室のリード・インピーダンスなどであった。

 1,509例が解析の対象となった。年齢中央値は69.3歳(IQR:57.7~78.1)で、女性が36%を占めた。心臓ペースメーカー装着が880例(58%)、ICD装着は629例(42%)であった。137例(9%)がペーシング依存だった。

8件で一過性のリセットが発生、パラメータ変化は低頻度
 全体の駆出率中央値は50%(IQR:30~60)で、冠動脈疾患が33%に認められた。冠動脈バイパス術が15%、大動脈弁置換術が4%、僧帽弁置換術が2%に施行されており、心臓再同期療法は11%に行われていた。

 デバイス装着の理由は、症候性徐脈が31%、突然死の1次予防が26%、完全房室ブロックが11%、突然死の2次予防が9%、頻脈・徐脈症候群が7%であった。ジェネレータ埋め込み後の経過期間中央値は29ヵ月(IQR:12~52)だった。

 MRI検査は2,103件行われ、このうち2回が320例(15%)、3回以上は274例(13%)であった。撮像領域は頭頸部が52%、腹部/骨盤が27%、胸部が12%、腕/脚が9%だった。

 臨床的に意義のある有害事象の報告はなかった。9件(0.4%、95%信頼区間[CI]:0.2~0.7)のMRI検査時に、患者(8例)のデバイスがバックアップ・モードにリセットされた。このうち8件は、リセットが一過性であった。1例では、バッテリー残量が1ヵ月未満で、心室感知抑制ペーシングにリセットされ、再プログラムはできないため、その後デバイスの交換が行われた。

 MRI検査直後にみられた最も頻度の高いデバイス・パラメータの顕著な変化(ベースラインから50%以上)は、P波アンプリチュードの減少であり、1%(13/1,347件)に認められた。

 長期フォローアップ(期間中央値1年、IQR:0.5~1.7)が行われた958例(63%)の1,327件(63%)のMRI検査では、ベースラインからの変化が顕著なデバイス・パラメータのうち頻度の高いものとして、P波アンプリチュードの減少(患者の4%)、心房捕捉の閾値の上昇(4%)、右心室捕捉の閾値の上昇(4%)、左心室捕捉の閾値の上昇(3%)が認められた。

 観察されたリード・パラメータの変化には、臨床的な意義はなく、デバイスの交換や再プログラミングを要することはなかった。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 准教授

J-CLEAR評議員