症候性の重度大動脈弁狭窄症の高リスク患者への経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)において、機械的拡張型カテーテル心臓弁(MEV)は自己拡張型経カテーテル心臓弁(SEV)に対し、安全性や有効性について非劣性であることが示された。有効性や中等度以上の弁周囲漏出率については、MEVのSEVに対する優越性も示された。米国・エバンストン病院(ノースショア大学ヘルスケアシステム)のTed E.Feldman氏らが、北米や欧州など55ヵ所の医療機関と共同で行った無作為化比較試験「REPRISEIII」で明らかにしたもので、JAMA誌2018年1月2日号で発表した。
超高リスク・高リスク患者912例を対象に試験
「REPRISEIII」試験では、2014年9月22日~2015年12月24日にかけて、北米、欧州、オーストラリアの55ヵ所の医療機関を通じて、症候性の重度大動脈弁狭窄症の超高リスク・高リスク患者912例を対象に試験を開始し、2017年3月8日まで追跡した。
同試験では、被験者を無作為に2群(2対1)に分け、一方にはMEVを(607例)、もう一方にはSEVを(305例)それぞれ使用してTAVRを行い、MEVのSEVに対する非劣性を検証した。
安全性に関する主要評価項目は、術後30日の全死因死亡、脳卒中、致死的出血または大出血、ステージ2または3の急性腎障害、主要血管合併症の複合アウトカムの発生で、非劣性マージンは10.5%とした。
有効性に関する主要評価項目は、術後1年の全死因死亡、機能障害を伴う脳卒中、中等度以上の弁周囲漏出の複合アウトカムの発生で、非劣性マージンは9.5%とした。
術後1年中等度以上の弁周囲漏出率、SEV群6.8%に対しMEV群0.9%
被験者の平均年齢は82.8歳(SD 7.3)で、女性が51%を占め、1年時点の評価が可能だったのは874例(96%)だった。
安全性に関する術後30日複合アウトカムの発生率は、MEV群20.3%、SEV群17.2%で、MEVのSEVに対する非劣性が示された(群間差:3.1%、Farrington-Manning非劣性検定による97.5%信頼区間[CI]:-∞~8.3、非劣性p=0.003)。
有効性に関する術後1年複合アウトカムの発生率についても、MEV群15.4%、SEV群25.5%と、MEVのSEVに対する非劣性が示された(群間差:-10.1%、同97.5%CI:−∞~4.4、非劣性p<0.001)。
副次評価項目の術後1年の中等度以上の弁周囲漏出率については、MEV群0.9%に対しSEV群6.8%で、MEV群のSEV群に対する優越性が示された(群間差:-6.1%、95%CI:-9.6~-2.6、優越性p<0.001)。優越性分析では主要有効性に関しても、MEV群のSEV群に対する統計的有意差が示された(群間差:-10.2%、同:-16.3~-4.0、優越性p<0.001)。
なお、MEV群は新規のペースメーカー植え込み(permanent pacemaker implantation)率が高く(35.5% vs.19.6%、p<0.001)、弁血栓症の割合は高かったが(1.5% vs.0%)、再手術率は低かった(0.2% vs.2.0%)。また、TAV-in-TAV処置率(0% vs.3.7%)、弁位置異常率(0% vs.2.7%)も低率だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)