オピオイドの乱用が世界的に急増している。手術を受けた患者の退院時のオピオイド投与の割合は、非手術例のほぼ4倍に達するが、医師による習慣的なオピオイド処方の、乱用への影響は不明だという。米国・ハーバード・メディカル・スクールのGabriel A. Brat氏らは、米国におけるオピオイドの不適正使用の大幅な増加には、術後にオピオイドを処方された患者への薬剤の補充(refill)および処方期間の延長が関連することを示し、BMJ誌2018年1月17日号で報告した。
退院後の不適正使用を後ろ向きに評価
研究グループは、オピオイド未投与の手術患者において、術後のさまざまなオピオイドの処方パターンが、依存、過剰摂取、乱用に及ぼす影響を定量的に評価するレトロスペクティブなコホート研究を実施した(研究助成は受けていない)。
民間保険会社の非特定化されたデータベースを用い、2008~16年に同社の健康保険に加入していた3,765万1,619人のうち、オピオイドの投与を受けたことがない手術患者101万5,116例のデータを収集した。
主要評価項目は、国際疾病分類第9版(ICD-9)の依存、乱用、過剰摂取の診断コードで同定されたオピオイドの不適正使用とした。不適正使用は、退院後にこれらの診断コードが1回以上適用された場合と定義し、処方オピオイド関連の診断コードに限定した。退院後の経口オピオイドの使用は、処方薬の補充と総用量、および使用期間で定義した。
予測因子としては、むしろ使用期間が重要
56万8,612例(56.0%)が術後にオピオイドの投与を受け、処方薬の90%が退院後3日以内に調剤されていた。不適正使用は5,906例(0.6%、183/10万人年)で同定され、このうち1,857例(0.2%)が術後1年以内に発生していた。
全体として不適正使用率は低かったが、オピオイド使用の増加とともに急速に上昇し、再処方が1回の患者の不適正使用の割合は、再処方されなかった患者のほぼ2倍であった。1回の再処方ごとに、補正済みの不適正使用のハザードは44.0%(95%信頼区間[CI]:40.8~47.2、p<0.001)上昇した。
また、オピオイドの使用期間が1週追加されるごとに、不適正使用の割合が平均34.2%(95%CI:26.4~42.6、p<0.001)上昇し、補正済みのハザードは19.9%(95%CI:18.5~21.4、p<0.001)上昇した。
不適正使用の予測因子としての強度は、使用期間と比較して処方された用量のほうが低く、使用期間が長期に及ぶ場合に限り、用量の重要度が高くなった。
著者は、「今回のデータは、術後の介入および行動変容の潜在的な手段を提示する知見として重要である」としている。
(医学ライター 菅野 守)