心房細動を合併した心不全患者で、種々の理由で抗不整脈薬治療を受けられない場合においても、心房細動に対するカテーテルアブレーションを行うことで、薬物治療のみでのレートコントロールやリズムコントロールに比べ、全死因死亡および心不全悪化による入院の複合リスクは、約4割減少することが示された。米国・ユタ大学のNassir F.Marrouche氏らが、患者363例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2018年2月1日号で発表した。心房細動を合併した心不全患者は、心不全単独患者よりも脳卒中や心不全悪化による入院、死亡のリスクが高い。心房細動に対するカテーテルアブレーションは、そのほかの心機能は正常で薬物療法が無効の症候性心房細動に推奨されており、これまでの試験で、心房細動合併の心不全患者においてアウトカムを改善することが示唆されていた。
NYHA心機能分類II~IV、左室駆出率35%以下、除細動器植込み患者を無作為化
研究グループは、発作性/持続性の症候性心房細動で、抗不整脈薬が無効、または忍容できない副作用や本人の意思で抗不整脈薬非服用の患者を対象に、試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、臨床ガイドラインに基づく心不全治療に加えて、一方の群には心房細動に対するカテーテルアブレーションを(179例)、もう一方の群には薬物治療によりレートコントロールまたはリズムコントロールを行った(184例)。
被験者は、NYHA心機能分類II~IV度の心不全で、左室駆出率が35%以下、植込み型除細動器を装着していた。
主要評価項目は、全死因死亡および心不全の悪化による入院の複合エンドポイントだった。
主要複合エンドポイント、アブレーション群のHRは0.62
中央値37.8ヵ月の追跡期間中、主要複合エンドポイントの発生は、薬物治療群82例(44.6%)のに対し、アブレーション群は51例(28.5%)と、有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.43~0.87、p=0.007)。
また、全死因死亡についても、薬物治療群46例(25.0%)に対しアブレーション群は24例(13.4%)と、リスクはほぼ半減した(HR:0.53、95%CI:0.32~0.86、p=0.01)。心不全の悪化による入院も、それぞれ66例(35.9%)、37例(20.7%)(HR:0.56、同:0.37~0.83、p=0.004)、心血管系の原因による死亡は41例(22.3%)、20例(11.2%)(HR:0.49、同:0.29~0.84、p=0.009)と、いずれもアブレーション群が有意に少なかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)