複雑性尿路感染症の治療において、メロペネム/vaborbactam配合剤の効果は、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤に対し非劣性であることが、米国・ミシガン大学のKeith S. Kaye氏らが実施したTANGO I試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年2月27日号に掲載された。カルバペネム系抗菌薬メロペネムとβ-ラクタマーゼ阻害薬vaborbactamの配合剤は、薬剤抵抗性グラム陰性菌による重症感染症に有効である可能性が示唆されている。
2種の配合剤の非劣性を評価する無作為化試験
TANGO Iは、急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症の治療における、メロペネム/vaborbactam配合剤の有効性と有害事象の評価を目的とする二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照非劣性試験である(The Medicines Company社などの助成による)。
年齢18歳以上の尿路感染症または急性腎盂腎炎の確定例または疑い例が、8時間ごとにメロペネム/vaborbactam配合剤(2g/2g、3時間静注)またはピペラシリン/タゾバクタム配合剤(4g/0.5g、30分静注)を投与する群にランダムに割り付けられた。患者は、盲検を維持するために、薬剤を含まない生理食塩水(30分または3時間静注)の投与を受けた。
15回以上の静注後は、全10日間の治療を完了するために、事前に規定された改善の判定基準を満たす場合は、経口レボフロキサシン(500mg、24時間ごと)に切り替えることとした。
米国食品医薬品局(FDA)の基準による主要エンドポイントとして、微生物学的に修正したintent-to-treat(ITT)集団における静注投与終了時のoverall success(臨床的な治癒または改善と、除菌の複合)、および欧州医薬品庁(EMA)の基準による主要エンドポイントとして、微生物学的に修正したITT集団および微生物学的に評価可能な集団における治癒検査受診時の除菌の評価を行った。事前に規定された非劣性マージンは-15%であった。
すべての主要エンドポイントで非劣性を確認
2014年11月~2016年4月の期間に、17ヵ国60施設に550例が登録され、545例(メロペネム/vaborbactam配合剤群:272例、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群:273例)が1回以上の投与を受けた(修正ITT集団)。
全体の平均年齢は52.8歳、361例(66.2%)が女性であった。微生物学的に修正したITT集団は374例(68.6%)、微生物学的に評価可能な集団は347例(63.7%)だった。
FDAの主要エンドポイントであるoverall successは、メロペネム/vaborbactam配合剤群の192例中189例(98.4%)で達成され、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の182例中171例(94.0%)に対し非劣性であった(群間差:4.5%、95%信頼区間[CI]:0.7~9.1%、非劣性のp<0.001)。
EMAの主要エンドポイントである微生物学的に修正したITT集団における除菌は、メロペネム/vaborbactam配合剤群の192例中128例(66.7%)で達成され、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の182例中105例(57.7%)に対し非劣性であった(群間差:9.0%、95%CI:-0.9~18.7%、非劣性のp<0.001)。また、微生物学的に評価可能な集団における除菌は、それぞれ178例中118例(66.3%)、169例中102例(60.4%)で達成され、同様に非劣性が示された(群間差:5.9%、95%CI:-4.2~16.0%、非劣性のp<0.001)。
有害事象は、メロペネム/vaborbactam配合剤群の272例中106例(39.0%)、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の273例中97例(35.5%)で発現し、試験薬関連有害事象はそれぞれ15.1%、12.8%に認められた。メロペネム/vaborbactam配合剤群で最も頻度の高い有害事象は頭痛(8.8%)で、すべて軽度~中等度であり、頭痛が原因で治療が中止された患者はなかった。
著者は、「メロペネム/vaborbactam配合剤が臨床的利益をもたらす患者のスペクトルを知るために、さらなる検討を要する」としている。
(医学ライター 菅野 守)