HSD17B13のスプライス変異体rs72613567:TAが、脂肪肝や脂肪性肝炎への進展リスク低下と関連することが、米国・Regeneron Genetics CenterのNoura S. Abul-Husn氏らによる検討で明らかになった。約4万7,000例を対象にした「DiscovEHRヒト遺伝学試験」のエクソーム解析データに加え、複数のコホート試験などを基にした検証結果で、NEJM誌2018年3月22日号で発表された。慢性肝疾患の基礎を成す遺伝要因は、新たな治療ターゲットを明らかにできる可能性があることから、解明への期待が寄せられていた。
ALT・AST値に関連の遺伝子変異体を特定
研究グループは、DiscovEHRヒト遺伝学試験の被験者4万6,544例のエクソーム解析データと電子保健医療記録(EHR)を基に、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値と血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値に関連する遺伝子変異体を特定した。
特定した変異体について、他の3つのコホート(被験者数1万2,527例)で再現性を確認した。そのうえで、DiscovEHR試験と2つの独立コホート(被験者数3万7,173例)で、慢性肝疾患の臨床的診断との関連性を評価した。さらに2,391例のヒト肝臓検体において、肝疾患の病理組織学的重症度との関連についても評価を行った。
アルコール性肝硬変、rs72613567:TAでリスク低下
肝脂肪滴蛋白17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素13をコードする「
HSD17B13」のスプライス変異体(rs72613567:TA)が、ALT低下(p=4.2×10
-12)とAST低下(p=6.2×10
-10)と関連していることが確認された。
DiscovEHR試験の被験者について調べたところ、同変異体はアルコール性肝障害のリスク低下や(ヘテロ接合では42%低下[95%信頼区間[CI]:20~58]、ホモ接合では53%低下[95%CI:3~77])、非アルコール性肝障害のリスク低下(それぞれ、17%[95%CI:8~25]と30%[同:13~43]の低下)と関連が認められた。
また同変異体は、アルコール性肝硬変のリスク低下や(それぞれ42%[95%CI:14~61]と73%[同:15~91]の低下)、非アルコール性肝硬変のリスク低下(それぞれ26%[95%CI:7~40]と49%[同:15~69]の低下)と関連した。こうしたリスク低下との関連性については、2つの独立コホートでも確認された。
ヒト肝臓検体による評価では、rs72613567:TAは非アルコール性脂肪性肝炎のリスク低下と関連していたものの、脂肪肝のリスク低下とは関連がなかった。
rs72613567:TAは、肝損傷リスクを増加する
PNPLA3 p.I148Mアレルによる肝損傷を軽減し、不安定で正常より短い蛋白となり、酵素活性が低下した。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)