軽度~中等度のアルツハイマー病に対し、経口アミロイドβ前駆体タンパク質切断酵素1(BACE-1)阻害薬verubecestatは、認知機能や日常生活動作の低下について抑制効果は認められないことが示された。米国・メルク社Research LaboratoriesのMichael F. Egan氏らがプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果を、NEJM誌2018年5月3日号で発表した。BACE-1阻害薬は、アルツハイマー病患者に特徴的な脳脊髄液中アミロイドβ量を減少することが認められ、同疾患に対する臨床的効果が期待されていた。
78週後の認知機能・日常生活動作の変化を比較
研究グループは、軽度~中等度のアルツハイマー病の診断を受けた1,958例を対象に試験を行った。被験者を無作為に3群に分け、verubecestat 12mg/日または40mg/日、プラセボをそれぞれ78週間投与した。
共主要評価項目は、アルツハイマー病評価スケールの認知機能サブスケール(ADAS-cog)と、アルツハイマー病共同研究の日常生活動作評価スケールスコア(ADCS-ADL)の、ベースラインから78週までの変化量だった。
認知機能・日常生活動作の変化に有意差みられず
本試験は、試験開始から50ヵ月(試験終了予定まで5ヵ月弱)の時点で、verubecestat投与が無益であるとの判断から早期に終了となった。
ADAS-cogスコアのベースラインから78週までの推定平均変化量は、12mg群7.9、40mg群8.0、プラセボ群7.7と、治療群はいずれもプラセボ群と有意差が認められなかった(12mg群の対プラセボp=0.63、40mg群の対プラセボp=0.46)。
また、ADCS-ADLスコアのベースラインから78週までの推定平均変化量も、12mg群-8.4、40mg群-8.2、プラセボ群-8.9で、治療群はいずれもプラセボ群と有意差が認められなかった(12mg群の対プラセボp=0.49、40mg群の対プラセボp=0.32)。
一方で、発疹、転倒や外傷、睡眠障害、自殺念慮、体重減、毛髪変色などの有害事象は、verubecestat群でプラセボ群より高率に認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)