発症時間不明の急性脳卒中患者において、脳虚血領域のMRI拡散強調画像とFLAIR画像のミスマッチを根拠に行ったアルテプラーゼ静脈内投与は、プラセボ投与と比べて、90日時点の機能的アウトカムは有意に良好であることが示された。ただし、頭蓋内出血は数的には多く認められている。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのGotz Thomalla氏らによる多施設共同無作為化二重盲険プラセボ対照試験「WAKE-UP試験」の結果で、NEJM誌オンライン版2018年5月16日号で発表された。現行ガイドラインの下では、静脈内血栓溶解療法は、発症から4.5時間未満であることが確認された急性脳卒中だけに施行されている。研究グループは、発症時間が不明だが、MRI画像の特色として発症が直近の脳梗塞と示唆された患者について、静脈血栓溶解療法はベネフィットがあるかを検討した。
MRI画像を基に介入、90日時点の対プラセボの機能的アウトカムを評価
研究グループは、ヨーロッパの8ヵ国で発症時間が不明の脳卒中患者を集め、アルテプラーゼ静脈内投与群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。すべての患者について、MRI拡散強調画像で虚血病変が認められるが、FLAIR像では明らかな高信号域(hyperintensity)が認められず、脳卒中発症がおそらく4.5時間未満と示唆された。なお、被験者のうち、血栓除去術が予定されていた患者は除外した。
主要評価項目は、修正Rankinスケールによる90日時点の神経学的障害スコア(スコア範囲:0[障害なし]~6[死亡])が良好なアウトカム(同スコアが0または1で定義)とした。副次アウトカムは、シフト解析による、アルテプラーゼ静脈内投与がプラセボよりも、修正Rankinスケールのスコアを低下する尤度とした。
アウトカムは有意に改善、一方で死亡・頭蓋内出血例が有意ではないが上昇
試験は、2012年9月24日~2017年6月30日に、61施設で1,362例がスクリーニングを受けた時点で、試験継続の資金調達が困難と予想され早期に中止となった。当初計画では800例を見込んでいたが、無作為化を受けたのは503例であった(アルテプラーゼ群254例、プラセボ群249例)。
90日時点でアウトカム良好であった患者は、アルテプラーゼ群131/246例(53.3%)、プラセボ群102/244例(41.8%)であった(補正後オッズ比:1.61、95%信頼区[CI]:1.09~2.36、p=0.02)。90日時点の修正Rankinスケールスコアの中央値は、アルテプラーゼ群1、プラセボ群2であった(補正後共通オッズ比:1.62、95%CI:1.17~2.23、p=0.003)。
一方で死亡は、アルテプラーゼ群10例(4.1%)、プラセボ群3例(1.2%)が報告された(オッズ比:3.38、95%CI:0.92~12.52、p=0.07)。また症候性頭蓋内出血は、アルテプラーゼ群2.0%、プラセボ群0.4%で認められた(オッズ比:4.95、95%CI:0.57~42.87、p=0.15)。
(ケアネット)