非心臓手術後心筋障害(MINS:myocardial injury after non-cardiac surgery)を呈した患者に対し、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)110mgの1日2回投与が、重大出血の有意な増大を認めることなく主要血管合併症(血管死、非致死的心筋梗塞など)のリスクを抑制することが、カナダ・マックマスター大学のP J Devereaux氏らによる国際無作為化プラセボ対照試験「MANAGE試験」の結果、明らかにされた。ダビガトランは周術期静脈血栓塞栓症を予防するが、MINS患者の血管合併症に有用であるかはこれまで検討されていなかった。MINS患者は世界で年間800万人に上ると推計され、術後2年間に心血管合併症や死亡リスクの増大が認められている。著者は今回の結果を受けて、「ダビガトラン110mgの1日2回投与により、それら患者の多くを助ける可能性が示された」とまとめている。Lancet誌2018年6月9日号掲載の報告。
19ヵ国84病院で、ダビガトラン110mgの1日2回経口投与 vs.プラセボ
ダビガトランの主要血管合併症の抑制効果を検討するMANAGE試験は、19ヵ国84病院から、45歳以上で非心臓手術後35日以内にMINSを呈した患者を登録して行われた。
被験者を無作為に1対1の割合で、ダビガトラン110mgを1日2回経口投与する群、または適合プラセボ投与を受ける群に割り付け、投与は最長2年間または試験終了までとした。また、MANAGE試験では部分的2×2ファクトリアルデザイン法が用いられ、プロトンポンプ阻害薬の非服用患者を、オメプラゾール20mgを1日1回投与する群、または適合プラセボ投与を受ける群に1対1の割合で割り付け、主要上部消化管合併症への効果の評価も行われた。無作為化は、試験担当者によって中央施設の24時間コンピュータ無作為化システムを利用したブロック無作為化、層別化が行われ、患者、医療従事者、データ収集者、アウトカム判定者は、治療割付をマスキングされた。
主要有効性アウトカムは、主要血管合併症(血管死、非致死的心筋梗塞、非出血性脳卒中、末梢動脈血栓症、下肢切断、症候性静脈血栓塞栓症)の発生で、主要安全性アウトカムは、致命的・重大・重要臓器出血の複合で、intention-to-treat法に基づき解析が行われた。
主要血管合併症の発生ハザード比は0.72、ダビガトラン群で有意に減少
2013年1月10日~2017年7月17日に、1,754例がダビガトラン(877例)またはプラセボ(877例)の投与を受けた。平均年齢はともに70歳、男性はそれぞれ52%、51%。MINSの診断基準は、両群とも80%がトロポニン値評価によるものだった。MINSの診断は術後1日、無作為化は診断後5日に行われた。MINS発症前の手術タイプは整形外科が両群とも最も多かった(38%、39%)。
試験薬の投与は、ダビガトラン群401/877例(46%)で、プラセボ群380/877例(43%)で中断となった。投与期間中央値は、ダビガトラン群80日(IQR:10~212)、プラセボ群41日(6~208)。中断とならなかった患者の投与期間中央値は、それぞれ474日(237~690)、466日(261~688)であった。
主要有効性アウトカムの発生は、ダビガトラン群(97/877例[11%])がプラセボ群(133/877例[15%])よりも有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.55~0.93、p=0.0115)。
主要安全性複合アウトカムは、ダビガトラン群29例(3%)、プラセボ群31例(4%)で発生した(HR:0.92、95%CI:0.55~1.53、p=0.76)。
なお、オメプラゾールに関する割り付けが行われた患者は556例。結果は別途報告される予定という。
(ケアネット)