活動性結核の予防において、リファンピシンの4ヵ月投与の効果はイソニアジドの9ヵ月投与に対し非劣性であり、治療完遂率はリファンピシンのほうが高く、安全性も優れることが、カナダ・マギル大学のDick Menzies氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年8月2日号に掲載された。潜在性結核感染における活動性結核の予防では、WHOなどがイソニアジドの6ヵ月または9ヵ月投与を推奨しているが、このレジメンは肝毒性によりアドヒアランスが不良なことが知られている。リファンピシンの4ヵ月投与は、イソニアジドの9ヵ月投与に比べGrade3/4の薬剤関連有害事象が少なく、安価であり、治療完遂率が優れることが報告されている。
9ヵ国が参加した無作為化試験
本研究は、活動性結核の予防における2つのレジメンの有用性を比較する非盲検無作為化対照比較試験であり、9ヵ国が参加し、2009年10月~2014年12月の期間に患者登録が行われた(カナダ健康研究所などの助成による)。
適格基準を満たした年齢18歳以上の潜在性結核感染患者が、リファンピシン(10mg/kg、最大600mg)を4ヵ月(120回)投与する群またはイソニアジド(5mg/kg、最大300mg)を9ヵ月(270回)投与する群にランダムに割り付けられた。
主要評価項目は、28ヵ月時の確定された活動性結核(培養で結核菌[
Mycobacterium tuberculosis]が陽性または生検検体で乾酪性肉芽腫を同定)の発生率であり、非劣性および優越性の解析が行われた。副次評価項目は、臨床的に診断された活動性結核(3人の医師のうち2人以上が活動性結核の可能性ありと判定)、Grade3~5の有害事象、治療レジメンの完遂などであった。
優越性は認めず、選択バイアスは最小化
リファンピシン群(3,443例)では、7,732人年のフォローアップ期間中に、確定された活動性結核が4例に発生し、臨床的に診断された活動性結核は4例に発生した。これに対し、イソニアジド群(3,416例)では、7,652人年のフォローアップ期間中に、それぞれ4例および5例に発生した。
発生率の差(リファンピシン群-イソニアジド群)は、確定された活動性結核が、100人年当たり0.01件未満(95%信頼区間[CI]:-0.14~0.16)であり、確定または臨床的に診断された結核は、100人年当たり0.01件未満(95%CI:-0.23~0.22)であった。
確定された結核と、確定または臨床的に診断された結核の発生率の差の95%CIの上限値は、事前に規定された累積発生率の非劣性マージンである0.75%を超えず、リファンピシン群のイソニアジド群に対する非劣性が確認された。一方、リファンピシン群のイソニアジド群に対する優越性は認めなかった。
また、治療完遂率は、リファンピシン群が78.8%と、イソニアジド群の63.2%に比べ有意に良好であった(群間差:15.1ポイント、95%CI:12.7~17.4、p<0.001)。
146日(リファンピシンの予定投与期間である4ヵ月の120%に相当)以内のGrade3~5の有害事象の発生率は、リファンピシン群が1.5%であり、イソニアジド群の2.6%に比べ有意に低かった(リスク差:-1.1ポイント、95%CI:-1.9~-0.4、p=0.003)。また、Grade3/4の肝毒性の発生率は、それぞれ0.3%、1.5%であり、リファンピシン群で有意に低かった(-1.2ポイント、-1.7~-0.7、p<0.001)。
著者は、「治療およびフォローアップが完遂できなかった患者における2群間の人口統計学的および臨床的な背景因子には差がなかったことから、本試験では選択バイアスが最小化されたと考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)