妊娠高血圧腎症(pre-eclampsia)は、認知症リスクを増大することが、デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らによる全国コホート研究の結果、示された。とくに脳血管性認知症のリスクは、非既往女性の3倍以上高く、より高齢(65歳以上)での発症と強い関連が認められたという。また、そのリスクは、糖尿病、高血圧、心血管疾患で補正後もやや減弱する程度で、著者は「妊娠高血圧腎症と脳血管性認知症は基礎メカニズムあるいは感受性経路を共有している可能性がある」と指摘している。なお、アルツハイマー病との関連はわずかで、肥満による交絡の非コントロールによる可能性が示唆された。得られた所見を踏まえて著者は「妊娠高血圧腎症歴を女性に尋ねることは、ベネフィットが得られる女性を臨床医が特定するのに役立ち、疾患の早期兆候に対するスクリーニングや早期臨床的介入を可能とするだろう」と述べている。BMJ誌2018年10月17日号掲載の報告。
1978~2015年の分娩デンマーク女性対象にコホート研究
妊娠期に高血圧障害を有した女性は、その後に認知障害や脳萎縮を示す兆候がみられる。それらは妊娠後の短期間に、または数十年後にみられる場合もある。後期発症のアルツハイマー病では、妊娠高血圧腎症の感受性を高める遺伝子異型STOX1遺伝子の過剰な発現が認められている。また、疫学研究により、妊娠期の高血圧障害と認知症には直接的な関連があることが、限定的だが見いだされていた。
研究グループは今回、デンマークの全国コホート研究により、妊娠高血圧腎症と後期認知症との関連を、全体的および認知症サブタイプ別、発症のタイミング別に調べた。
被験者は、1978~2015年に1人以上を出産または死産した全女性。主要評価項目は、妊娠高血圧腎症の既往の有無別に、Cox回帰モデルを用いて算出した認知症率を比較したハザード比(HR)であった。
後期の脳血管性認知症発症リスク、罹患女性は非罹患女性の3.46倍
コホートは女性117万8,005例から成り、フォローアップは2,035万2,695人年であった。
妊娠高血圧腎症歴のある女性は、同病歴のない女性と比べて、後期において脳血管性認知症を発症するリスクが3倍以上高かった(HR:3.46、95%信頼区間[CI]:1.97~6.10)。脳血管性認知症との関連は、後期発症の脳血管性認知症のほうが(HR:6.53、95%CI:2.82~15.1)、早期発症(2.32、1.06~5.06)と比べて強いことが認められた。
糖尿病、高血圧、心血管疾患で補正後も、HRはわずかな減弱にとどまった。また、感度解析で、BMIと血管性認知症は関連していない可能性が示唆された。
一方、アルツハイマー病(HR:1.45、1.05~1.99)およびその他/分類不能の認知症(1.40、1.08~1.83)との関連の程度は、わずかであった。
(ケアネット)