転移のある前立腺がん、前立腺への放射線療法は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/11/05

 

 新たに診断された転移を有する前立腺がんについて、前立腺への放射線療法は、全生存率(OS)を改善しないことが、英国・王立マーズデン病院のChristopher C. Parker氏らによる第III相無作為化対照試験の結果、示された。本検討は、これまでに得られた所見に基づき、「転移を有する前立腺がん患者における前立腺放射線療法はOSを改善し、そのベネフィットは転移負荷が低い患者で最大になる」との仮説を検証する目的で行われた。Lancet誌オンライン版2018年10月21日号掲載の報告。

スイスと英国の117病院で無作為化試験、照射スケジュール・転移負荷別検討も
 転移を有する前立腺がんに対する、標準治療(対照群)と標準治療+放射線療法(放射線療法群)の比較試験は、スイスと英国の117病院で行われた。適格患者は、新たに転移を有する前立腺がんが診断された患者で、1対1の割合で対照群もしくは放射線療法群に無作為に割り付けられた。無作為化では、病院、無作為化時の年齢、リンパ節転移、WHOパフォーマンスステータス、アンドロゲン遮断療法の予定、ドセタキセル投与の予定(2015年12月から)、アスピリン標準量もしくは非ステロイド性抗炎症薬の使用による層別化も行われた。

 標準治療は、持続的アンドロゲン遮断療法で、2015年12月からはドセタキセル併用が許容された。放射線療法群の被験者は、無作為化前に決められていたスケジュールにのっとり、連日照射(4週間で55Gy/20回)、または週1回照射(6週間で36Gy/6回)を受けた。

 主要評価項目(intention-to-treat解析)は、死亡数で評価したOSであった。解析は、検出力90%、片側α値2.5%で行い、ハザード比(HR)は0.75を目標とした。副次評価項目は、治療無失敗生存(failure-free survival)、転移を有する無増悪生存、前立腺がん特異的生存、症候性局所無病生存などであった。解析はCox比例ハザード・フレキシブルパラメトリックモデルを用い、層別化因子の補正を行った。また、ベースラインの転移負荷と放射線治療スケジュールによる前立腺放射線療法の効果を調べる2つの事前に規定したサブグループ解析を行った。

OSを改善せず
 2013年1月22日~2016年9月2日に、男性2,061例が無作為化を受け、1,029例が対照群に、1,032例が放射線療法群に割り付けられた。割付はバランスが取れており、年齢中央値は68歳(IQR:63~73)、前立腺特異抗原量中央値は97ng/mL(33~315)。また、初期にドセタキセルを受けた患者は367例(18%)であった。連日照射は1,082例(52%)、週1回照射は979例(48%)で、低転移負荷819例(40%)、高転移負荷1,120例(54%)、転移負荷不明122例(6%)であった。

 放射線療法は、治療無失敗生存を改善したが(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.68~0.84、p<0.0001)、OSは改善しなかった(0.92、0.80~1.06、p=0.266)。

 放射線療法の忍容性は良好であった。有害事象(Radiation Therapy Oncology Group、Grade3~4)の報告は、療法中48例(5%)、療法後37例(4%)であった。1つ以上の重篤な有害事象(Common Terminology Criteria for Adverse Events、Grade3以上)の報告率は、安全性評価集団において、両群間で同程度であった(対照群398例[38%]、放射線療法群380例[39%])。

(ケアネット)

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コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏

東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学 主任教授