再発寛解型多発性硬化症(MS)患者において、フィンゴリモド、アレムツズマブ、ナタリズマブによる初回治療は、グラチラマー酢酸塩またはインターフェロンβ(IFNβ)による初回治療と比較し、二次性進行型MSへの移行リスクが低い。英国・ケンブリッジ大学のJ. William L. Brown氏らが、疾患修飾薬(DMT)の使用と二次性進行型MSへの移行リスクとの関連性を検証した前向きコホート研究の結果を報告した。未治療の再発寛解型MS患者の80%は20年以内に二次性進行型MSに移行するが、DMTと二次性進行型MSへの移行との関連性について妥当性が確認された定義を用いた研究はほとんどなかった。著者は今回の結果について、「DMTを選択する際に役立つ可能性がある」とまとめている。JAMA誌2019年1月15日号掲載の報告。
再発寛解型MS患者約1,500例について解析
研究グループは、21ヵ国の神経センター68施設において、1988~2012年にDMTを開始(または臨床モニタリング)し最低4年以上前向きに追跡した再発寛解型MS患者を対象とするコホート研究を実施した。DMT(IFNβ、グラチラマー酢酸塩、フィンゴリモド、ナタリズマブ、アレムツズマブ)の使用・種類・時期について調査するとともに、客観的に定義された二次性進行型MSへの移行(EDSSスコア5.5以下は1ポイント増加、5.5を超える場合は0.5ポイント増加)を主要評価項目として解析した。
傾向スコアマッチング後に1,555例(女性1,123例、ベースラインの平均年齢[±SD]35±10歳)の患者が組み込まれた。最終追跡調査日は2017年2月14日であった。
フィンゴリモド、アレムツズマブ、ナタリズマブで移行リスクがより低い
グラチラマー酢酸塩またはIFNβで初回治療を行った患者は、マッチングした未治療患者と比較して、二次性進行型MSへの移行リスクが低下した(ハザード比[HR]:0.71[95%信頼区間[CI]:0.61~0.81]、p<0.001、5年絶対リスク:12 vs.27%、追跡期間中央値:7.6年[四分位範囲:5.8~9.6])。
フィンゴリモド(HR:0.37[0.22~0.62]、p<0.001、7 vs.32%、4.5年[4.3~5.1])、ナタリズマブ(HR:0.61[0.43~0.86]、p=0.005、19 vs.38%、4.9年[4.4~5.8])、アレムツズマブ(HR:0.52[0.32~0.85]、p=0.009、10 vs.25%、7.4年[6.0~8.6])でも同様の結果であった。フィンゴリモド、アレムツズマブ、ナタリズマブによる初回治療は、グラチラマー酢酸塩、IFNβと比較して、移行リスク低下との関連が認められた(HR:0.66[0.44~0.99]、p=0.046、7 vs.12%、5.8年[4.7~8.0])。
グラチラマー酢酸塩またはIFNβは、発症後5年以内に開始された場合、それ以降に開始された場合と比較して、移行リスクが低下した(HR:0.77[0.61~0.98]、p=0.03、3 vs.6%、13.4年[11~18.1])。グラチラマー酢酸塩またはIFNβからフィンゴリモド、アレムツズマブまたはナタリズマブへの変更が5年以内の場合も、それ以降と比較して同様の結果であった(HR:0.76[0.66~0.88]、p<0.001、8 vs.14%、5.3年[4.6~6.1])。
(医学ライター 吉尾 幸恵)