心血管疾患のない人へのアスピリン投与は、心血管リスクを低減する一方で、大出血リスクを増大することが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのSean L. Zheng氏らによる、システマティックレビューとメタ解析の結果、示された。著者は、「この情報を、心血管イベントと出血の1次予防におけるアスピリンの使用に関して患者と話し合う際に、伝えるのがよいだろう」と述べている。心血管系の1次予防におけるアスピリンの役割については、出血リスクが増大するという点でベネフィットが限定的であり、なお議論の的になっている。研究グループは、13の無作為化試験を対象にメタ解析を行った。JAMA誌2019年1月22日号掲載の報告。
被験者総数1,000例以上、追跡期間12ヵ月以上の試験を対象に分析
研究グループは、Cochrane LibraryのCentral Register of Controlled Trials(CENTRAL)を通じて、2018年11月1日時点のPubMedとEmbase掲載の無作為化試験を検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。
心血管疾患のない被験者数1,000例以上を対象に、追跡期間12ヵ月以上、アスピリンとプラセボまたは無治療を比較した無作為化試験を対象に、分析を行った。
ベイズ法および頻度論的方法でメタ解析を行い、アスピリンと心血管イベントの1次予防、または出血との関連を評価した。
主要心血管アウトカムは、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合とした。主要出血アウトカムは、個々の試験で定義したすべての大出血とした。
心血管アウトカムのNNTは265、大出血のNNHは210
計13の無作為化試験(16万4,225例、105万511人年)が解析に含まれた。被験者の年齢中央値は62歳、男性は47%(7万7,501例)で、糖尿病患者が19%(3万361例)含まれ、ベースラインの主要心血管アウトカム発生リスクの中央値は9.2%(範囲:2.6~15.9)だった。
心血管複合アウトカムの発生率は、アスピリン群57.1/1万人年に対し、非アスピリン群は61.4/1万人年だった(ハザード比[HR]:0.89[95%信頼区間[CI]:0.84~0.95]、絶対リスク減少:0.38%[95%CI:0.20~0.55]、治療必要数[NNT]:265)。
一方、大出血の発生率は、アスピリン群23.1/1万人年に対し非アスピリン群は16.4/1万人年だった(HR:1.43[95%CI:1.30~1.56]、絶対リスク増加:0.47%[95%CI:0.34~0.62]、有害必要数[NNH]:210)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)