アポリポ蛋白B(アポB)値の単位変化当たりのトリグリセライド(TG)値低下の臨床的有益性は、LDLコレステロール(LDL-C)値低下とほぼ同等であり、アポB含有リポ蛋白粒子の減少の絶対値と比例する可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のBrian A. Ference氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年1月29日号に掲載された。TGとコレステロールは、いずれもアポB含有リポ蛋白粒子によって血漿中に運ばれる。血漿TG値の低下により、心血管イベントのリスクはLDL-C値の低下と同程度に低減するかとの疑問への確定的な回答は得られていないという。
63研究のメンデル無作為化解析でCHDリスクを評価
研究グループは、リポ蛋白リパーゼ(
LPL)遺伝子のTG低下バリアントおよびLDL受容体(
LDLR)遺伝子のLDL-C低下バリアントと、アポBの単位変化当たりの心血管疾患リスクとの関連を評価する目的で、メンデル無作為化解析を実施した(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。
解析には、1948~2017年の期間に北米および欧州で行われた63件のコホート研究および症例対照研究に参加した患者のデータを用いた。
LPLおよび
LDLRの遺伝子スコアと関連する血漿TG値、LDL-C値、アポB値の評価を行った。
主要アウトカムは、アポB含有リポ蛋白の10mg/dL低下当たりの冠動脈性心疾患(CHD:冠動脈死、心筋梗塞、冠動脈血行再建)のオッズ比(OR)とした。
個々のアポB含有リポ蛋白のリスクへの影響は同程度
65万4,783例(平均年齢62.7[SD 8.1]歳、51.4%が女性)が解析に含まれ、このうち9万1,129例がベースライン時にCHDに罹患していた。
アポB含有リポ蛋白10mg/dL低下当たりの
LPL遺伝子スコアは、TG値の69.9mg/dL(95%信頼区間[CI]:68.1~71.6、p=7.1×10
-1363)の低下およびLDL-C値の0.7mg/dL(0.03~1.4、p=0.04)の上昇と関連した。これに対し、アポB含有リポ蛋白10mg/dL低下当たりの
LDLR遺伝子スコアは、LDL-C値の14.2mg/dL(13.6~14.8、p=1.4×10
-465)の低下およびTG値の1.9mg/dL(0.1~3.9、p=0.04)の低下と関連を示した。
このようにTG値およびLDL-C値の変動には違いがみられたが、
LPL遺伝子スコアおよび
LDLR遺伝子スコアと、アポB含有リポ蛋白10mg/dL低下当たりのCHDリスクの低下との関連はほぼ同じであった(
LPL遺伝子スコア OR:0.771、95%CI:0.741~0.802、p=3.9×10
-38、
LDLR遺伝子スコア:0.773、0.747~0.801、p=1.1×10
-46)。
多変量メンデル無作為化解析では、アポB値の差で補正すると、TG値およびLDL-C値とCHDリスクとの関連はなくなったが、アポB値とCHDリスクの関連は維持されていた(TG値 OR:1.014、95%CI:0.965~1.065、p=0.19、LDL-C値:1.010、0.967~1.055、p=0.19、アポB値:0.761、0.723~0.798、p=7.51×10
-20)。
著者は、「すべてのアポB含有リポ蛋白粒子(TG rich VLDL粒子、その代謝物であるレムナント、LDL粒子)は、ほぼ同程度の心血管疾患リスクへの作用を有し、結果として、TG値やLDL-C値、これら双方の低下の臨床的有益性は、実際のTG値やLDL-C値の変化にかかわらず、アポB含有リポ蛋白の変化の絶対値と比例する可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)