大学病院で血液検査を実施した入院および外来の全連続症例2万例において、20例に1例は、高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI)値が、推奨基準値上限(ULN)を超えていたという。英国・サウサンプトン大学病院 NHS Foundation TrustのMark Mariathas氏らが、hs-cTnIの99パーセンタイル値を明らかにすることを目的とした前向き観察コホート研究の結果を報告した。現行ガイドラインでは、急性心筋梗塞の診断/除外診断にトロポニン測定を推奨しているが、年齢、性別、腎機能等のさまざまな臨床要因がトロポニン値に影響を与えている。病院の全患者集団におけるトロポニン値の真の分布についてはほとんど知られていなかった。結果を受けて著者は、「急性心筋梗塞の診断における推奨ULN値の適用に当たっては、とくに心筋梗塞の臨床症状がない場合、誤診を避けるためhs-cTnIを注意深く解釈する必要がある、ということが浮き彫りなった」とまとめている。BMJ誌2019年3月13日号掲載の報告。
入院/外来患者2万例でhs-cTnI濃度の99パーセンタイル値を解析
研究グループは、2017年6月~8月の間に、サウサンプトン大学病院 NHS Foundation Trustにおいて、臨床所見に対する医学的判断のために血液検査を実施したすべての入院/外来連続症例2万例を対象に、hs-cTnIを測定し評価を行った。
主要評価項目は、全患者におけるhs-cTnIの分布、とくに99パーセンタイル値とし、上級医(supervising doctor)の指示で実施されたhs-cTnI測定は解析から除外した。
99パーセンタイル値は約300ng/L、20例中1例は推奨上限値超え
全2万例におけるhs-cTnIの99パーセンタイル値は296ng/Lであった。ULNとして現在臨床的に使用している製造業者の推奨値は40ng/Lで、全患者の20例に1例は40ng/L以上であった。
急性心筋梗塞と診断された患者122例と、医学的判断のためにhs-cTnI測定が指示された患者1,707例を除外した、残りの患者1万8,171例における99パーセンタイル値は189ng/Lであった。
また、99パーセンタイル値は、入院患者4,759例で563ng/L、外来患者9,280例で65ng/L、救急部門の3,706例で215ng/Lであり、225例(6.07%)が推奨ULN値を超えていた。集中治療室の123例中48例(39.02%)、および内科の全入院患者のうち67例(14.16%)のhs-cTnI濃度が、推奨ULN値よりも高値であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)