非心臓大手術を受ける成人において、未診断の重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、術後30日の心血管合併症リスクの有意な増大と関連することが示された。中国・香港中文大学のMatthew T.V. Chan氏らが、1,218例を対象に行った前向きコホート試験の結果で、JAMA誌2019年5月14日号で発表した。一般集団の検討で、未診断のOSAは心血管リスクを増大することが示されていたが、OSAが周術期において同程度のリスクとなるかは不明であった。今回の結果について著者は、「さらなる研究を行い、介入によって同リスクが軽減可能かを評価する必要がある」とまとめている。
術前にOSA重症度を調べ、術後30日の心血管複合イベント発生との関連を調査
研究グループは、2012年1月~2017年7月にかけて、5ヵ国8病院で、OSA未診断で非心臓大手術を受ける患者1,218例を対象に試験を開始し、2017年8月まで追跡した。被験者は、術前のポータブル・睡眠モニタリングで、OSA軽症(呼吸イベント指数[REI]:5~14.9/時)、中等症(REI:15~30)、重症(REI:>30)に分類された。術後は、夜間パルスオキシメーター、心筋トロポニン濃度測定などによるモニタリングを行った。
主要アウトカムは、術後30日の、心筋傷害、心臓死、心不全、血栓塞栓症、心房細動、脳卒中の心血管複合イベント発生だった。比例ハザード分析を行い、OSAと術後心血管合併症リスクとの関連を検証した。
重症OSA患者のリスクは非OSA患者の2.23倍
被験者の平均年齢は67歳、うち女性は40.2%だった。術後30日の心血管複合イベントの発生率は、重症OSAが30.1%(136例中41例)、中等症OSAが22.1%(235例中52例)、軽症OSAが19.0%(452例中86例)、非OSAが14.2%(395例中56例)だった。OSAと、術後30日の心血管複合イベントリスク増大との有意な関連が認められた(補正後ハザード比[HR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.19~2.01、p=0.01)。
OSAの重症度別では、同イベントリスク増大との有意な関連が認められたのは重症OSAのみで、対非OSAの補正後HRは2.23(95%CI:1.49~3.34、p=0.001)だった。中等症OSA(補正後HR:1.47、95%CI:0.98~2.09、p=0.07)、軽症OSA(1.36、0.97~1.91、p=0.08)では、有意差は認められなかった。
なお、術後3夜の酸化ヘモグロビン飽和度が80%未満であった時間の平均累積値は、術後心血管合併症の未発症群10.2分(95%CI:7.8~10.9)に対し、発症群は23.1分(15.5~27.7)と有意に長かった(p<0.001)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)