2型糖尿病の患者に対する強化血糖コントロールを中央値5.6年間行い、合計で15年間追跡したところ、標準療法を受けて追跡を受けた参加者と比べて、主要心血管イベントリスクは、両群の糖化ヘモグロビン値曲線の分離が持続していた期間(オリジナル試験中の中央値約7.1年間)に限り有意な低下が認められ、強化血糖コントロールの遺産効果(legacy effect)や死亡率への有益性を示す知見は認められなかったことが明らかにされた。米国・フェニックス退役軍人(VA)ヘルスケアシステムのPeter D. Reaven氏らによる検討で、NEJM誌2019年6月6日号で発表された。同試験のオリジナルの介入・観察試験(合計10年間追跡)では、強化血糖コントロール群の同リスクが有意に17%低下したことが報告されていた。
通算15年追跡し、主要心血管イベントリスクを比較
オリジナル試験では、2型糖尿病の退役軍人1,791例を対象に中央値5.6年間の強化血糖コントロール(介入群)vs.標準療法(対照群)で比較する試験を行い、合計10年間追跡した。試験終了後、登録被験者(完全コホート1,655例)について、中央データベースを用いて心血管イベント、入院、死亡を特定しながら観察を継続。さらに同意を得た被験者(調査コホート1,391例)について、調査とカルテレビューによる追加データの提供を受けて分析を行った。
事前規定の主要アウトカムは、主要心血管イベントの複合(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、うっ血性心不全の新規発症または悪化、虚血性壊疽による切断、心血管死)だった。副次アウトカムは、全死因死亡とした。
糖化ヘモグロビン値曲線の分離持続期間のみCVイベントリスクが有意に低下
オリジナル試験(1,791例を対象)の期間中、強化血糖コントロール群(892例)と標準療法群(899例)では、糖化ヘモグロビン値曲線に平均1.5ポイントの差が認められた。しかし、同差は試験終了後3年間で0.2~0.3ポイントまで縮小した。
合計15年の追跡期間において、強化血糖コントロール群の主要心血管イベントリスクの有意な低下は認められなかった(ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.78~1.06、p=0.23)。また、副次アウトカムの全死因死亡リスクについても、低下は認められなかった(同:1.02、0.88~1.18)。
ただし、糖化ヘモグロビン値曲線の分離が持続している間(オリジナル試験中の中央値約7.1年間)は、強化血糖コントロール群の主要心血管イベントリスクの低下が認められた(HR:0.83、95%CI:0.70~0.99)。しかし、そのベネフィットは持続せず、同値が等しくなった後は同リスクの低下は認められなかった(同:1.26、0.90~1.75)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)