地域ベースの高血圧スクリーニングと、血圧上昇が認められた人々に対する降圧治療と行動変容の勧奨は、長期的には地域レベルでの収縮期血圧に重要な影響を与えうることが示された。ドイツ・ハイデルベルク大学のSimiao Chen氏らが、中国全土の高齢者を対象としたコホート研究のデータを用いた解析結果を報告した。著者は、「このアプローチは、中国ならびに高血圧の診断と治療について大きなアンメットニーズを有する国々において、心血管疾患の高い負荷を解決するだろう」と述べている。中国やほかの中低所得国において、地域ベースの高血圧スクリーニングがその後の血圧にもたらす影響に関するエビデンスは不足していた。BMJ誌2019年7月11日号掲載の報告。
高齢者約3,900例でスクリーニング介入前後の血圧を評価
研究グループは、地域密着型高血圧スクリーニングの血圧への影響を評価する目的で、中国人高齢者を対象とした長期健康長寿調査(Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey:CLHLS)の、2011~12年と2014年のデータを解析した。
本調査では、高血圧のスクリーニングで血圧上昇を認めた場合、治療と生活習慣(体重管理、禁煙、アルコールや塩分摂取の抑制、運動など)の改善を口頭で奨励した。
解析対象は、高血圧と診断されたことがない高齢者3,899例で、2011~12年と2014年の血圧について回帰不連続解析にて評価した。
スクリーニングと指導により2年後の収縮期血圧が低下
スクリーニングの介入による収縮期血圧の変化量は、共変量のないモデルにおいて-6.3mmHg(95%信頼区間[CI]:-11.2~-1.3)、人口統計的・社会的・行動的な共変量で補正したモデルにおいて-8.3mmHg(95%CI:-13.6~-3.1)であった。拡張期血圧への影響は小さく、すべてのモデルで有意差は確認されなかった。
介入の影響を推定するため、代替関数を用い高血圧の閾値を変化させた場合でも、結果は類似していた。また、サブグループ解析でも結果は同じであった。
なお、著者は、65歳以上を対象としたこと、高血圧治療に関するデータを利用できていないことなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)