ヘビースモーカー(20パック年以上喫煙)の心血管疾患(CVD)リスクは、禁煙後5年未満で、現喫煙者と比較して約4割減少するが、非喫煙者との比較では禁煙から5年以上を経過しても有意に高いままであることが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのMeredith S. Duncan氏らが、フラミンガム心臓研究の被験者のデータを解析し明らかにしたもので、JAMA誌2019年8月20日号で発表した。禁煙後のCVDリスクの時間的経過は明らかになっていない。試算では元喫煙者のリスクは5年のみと考えられていた。
フラミンガム心臓研究の被験者8,770例について解析
研究グループは、ベースラインでCVDがなかったフラミンガム心臓研究の被験者で、2015年までに前向きに追跡収集されたデータについて後ろ向きに解析した。被験者は、オリジナルコホート(1954~58年に行われ4回の診察を受けた)3,805例と、子孫コホート(1971~75年に行われ初回診察を受けた)4,965例の計8,770例だった。
自己申告による喫煙の有無、禁煙後の経過年数、喫煙中の累計パック年を調べ、CVD(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死と定義)との関連を検証した。主要解析は、両コホート複合(プールコホート)で行い、ヘビースモーカー(20パック年以上喫煙)について行った。
禁煙5年未満で現喫煙者の約4割減に、一方で非喫煙者との比較では高いまま
被験者8,770例の平均年齢は42.2歳(SD 11.8)で、45%が男性だった。そのうち喫煙経験者は5,308例で、ベースラインの喫煙累計(パック年)の中央値は17.2(四分位範囲:7~30)だった。ヘビースモーカーは2,371例(追跡中に禁煙した元喫煙者406例[17%]、現喫煙者1,965例[83%])だった。
追跡期間中央値26.4年中の初回CVDイベント発生は2,435件だった(オリジナルコホート1,612件[うちヘビースモーカー665例]、子孫コホート823例[同430例])。
プールコホートにおいて、現喫煙者と比較して5年以内の禁煙者のCVD罹患率は有意に低かった。罹患率は現喫煙者11.56/1,000人年(95%信頼区間[CI]:10.30~12.98)に対し、禁煙5年未満者で6.94/1,000人年(同:5.61~8.59)だった(群間差:-4.51、95%CI:-5.90~-2.77、ハザード比[HR]:0.61、95%CI:0.49~0.76)。
一方で非喫煙者の同罹患率は5.09/1,000人年(95%CI:4.52~5.74)で、それと比較すると喫煙者のCVDリスクは、禁煙後10~15年で6.31/1,000人年(95%CI:4.93~8.09)になり、禁煙から10年以降でその関連が有意ではなくなったが、リスクとしては高いままであった(群間差:1.27[95%CI:-0.10~3.05]、HR:1.25[95%CI:0.98~1.60])。
(8月29日 記事の一部を修正いたしました)
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)