周術期の潜在性脳卒中、認知機能低下リスクを増大/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/08/29

 

 65歳以上の待機的非心臓手術時における周術期の潜在性脳卒中(covert stroke)の発生は、術後1年の認知機能低下リスクの増大と関連しており、発生率は14人に1人の割合(約7%)だったことが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のMarko Mrkobrada氏ら「NeuroVISION」研究グループの検討により明らかにされた。非手術時の潜在性脳卒中の発生頻度は高く、認知機能の低下と関連することが知られている。また、成人における非心臓手術後の顕在性脳卒中(overt stroke)の発生率は1%未満で重大な病状と関連するが、周術期潜在性脳卒中についてはほとんど知られていなかった。Lancet誌オンライン版2019年8月15日号掲載の報告。

9ヵ国12ヵ所の大学医療センターで試験
 NeuroVISION試験は、2014年3月24日~2017年7月21日にかけて、9ヵ国12ヵ所の大学医療センターを通じて行われた前向きコホート試験。入院にて待機的非心臓手術を受け、術後に脳MRI検査を実施した65歳以上の患者1,114例について評価した。

 2人の独立した神経放射線学専門医が、患者の臨床データをマスクしたうえで、MRI画像から急性脳梗塞の所見を評価した。潜在性脳卒中と術前ベースラインから術後1年の認知機能低下との関連について、多変量回帰分析を行い検証した。認知機能低下の定義は、モントリオール認知アセスメント(Montreal Cognitive Assessment:MoCA)による2ポイント以上の低下とした。

発症者の認知機能低下、非発症者の約2倍
 周術期潜在性脳卒中を発症したのは、被験者1,114例のうち78例(7%、95%信頼区間[CI]:6~9)だった。

 術後1年の追跡が完了した被験者のうち認知機能低下が認められたのは、周術期潜在性脳卒中を発症しなかった被験者では29%(274/932例)だったのに対し、発症した被験者では42%(29/69例)だった(補正後オッズ比:1.98、95%CI:1.22~3.20、絶対リスク増加:13%、p=0.0055)。

 周術期潜在性脳卒中は、周術期せん妄リスクの増大とも関連していた(ハザード比[HR]:2.24、95%CI:1.06~4.73、絶対リスク増加:6%、p=0.030)。また、術後1年時点の顕在性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の増大とも関連していた(HR:4.13、95%CI:1.14~14.99、絶対リスク増加:3%、p=0.019)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)