プラチナ製剤ベースの化学療法が奏効した新規診断進行卵巣がん患者では、PARP阻害薬niraparibはプラセボと比較して、相同組み換え欠損(homologous-recombination deficiency:HRD)の有無にかかわらず、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長させることが、スペイン・Clinica Universidad de NavarraのAntonio Gonzalez-Martin氏らが行ったPRIMA/ENGOT-OV26/GOG-3012試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月28日号に掲載された。niraparibは、BRCA遺伝子変異の有無にかかわらず、プラチナ製剤ベースの化学療法施行後の再発卵巣がん患者のPFS期間を延長すると報告されている。一方、プラチナ製剤ベースの化学療法が奏効した新規診断進行卵巣がん患者におけるniraparibの有効性は知られていない。また、BRCA遺伝子変異は、腫瘍が何らかのHRDを有することを示しているが、BRCA遺伝子変異が陰性の場合は腫瘍のゲノム不安定性のパターンが、そのような表現型を付与する可能性があるという。
niraparibの有効性を階層的検定法を用いて評価
本研究は、20ヵ国181施設が参加した第III相の二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2016年7月~2018年6月の期間に患者登録が行われた(GlaxoSmithKlineの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、新規に診断され組織学的に確定された卵巣、腹膜、卵管の進行がんとし、国際産婦人科連合(FIGO)の基準でStageIII/IVの漿液性または類内膜腫瘍の患者であった。
被験者は、プラチナ製剤ベースの化学療法の最終投与から12週以内に、niraparibまたはプラセボを1日1回経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は、28日を1サイクルとして36ヵ月または病勢が進行するまで行われた。
主要エンドポイントはPFSとし、階層的検定法(hierarchical-testing method)を用いて、HRD腫瘍を有する患者の評価を行った後に、全患者の検討が行われた。また、PFSの解析時に、事前に規定された全生存(OS)の中間解析が実施された。
niraparib群はBRCA遺伝子変異の有無にかかわらず、HRD腫瘍と全患者でPFSが良好
733例が登録され、niraparib群に487例(年齢中央値62歳[範囲:32~85])、プラセボ群には246例(62歳[33~88])が割り付けられた。373例(50.9%)がHRD腫瘍(niraparib群247例、プラセボ群126例)を有していた。
HRD腫瘍を有する患者のPFS期間中央値は、niraparib群が21.9ヵ月と、プラセボ群の10.4ヵ月に比べ、有意に長かった(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.31~0.59、p<0.001)。また、全患者のPFS期間中央値は、niraparib群が13.8ヵ月であり、プラセボ群の8.2ヵ月に比し、有意に延長した(0.62、0.50~0.76、p<0.001)。
OSの中間解析では、全患者の24ヵ月OS率はniraparib群が84%、プラセボ群は77%であった(HR:0.70、95%CI:0.44~1.11)。また、HRD腫瘍患者の24ヵ月OS率はniraparib群が91%、プラセボ群は85%であった(0.61、0.27~1.39)。
BRCA遺伝子変異陽性例では、HRD腫瘍患者のPFS期間中央値はniraparib群が22.1ヵ月、プラセボ群は10.9ヵ月であった(HR:0.40、95%CI:0.27~0.62)。また、また、
BRCA遺伝子変異陰性のHRD腫瘍患者のPFS期間中央値は、niraparib群が19.6ヵ月、プラセボ群は8.2ヵ月であった(0.50、0.31~0.83)。
niraparib群で最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、貧血(31.0%)、血小板減少(28.7%)、好中球減少(12.8%)であった。niraparib群で、有害事象による減量が70.9%に、治療中止は12.0%に認められた。治療関連死はみられなかった。
著者は「歴史的に、PARP阻害薬の臨床効果は
BRCA遺伝子変異と関連するとされてきたが、niraparibは
BRCA遺伝子変異の有無にかかわらず、プラセボと比較してHRD腫瘍患者および全患者の双方においてPFS期間の延長をもたらすことが確かめられた」としている。
(医学ライター 菅野 守)