オーストラリア・シドニー大学のLisa Parker氏らは、患者団体と製薬企業の間の相互作用を調べる質的研究を行った。疾患別に存在する患者団体の多くが、製薬企業から資金提供を受けているが、患者団体は、患者および介護者に対する支援やアドボカシー、情報提供において重要な役割を担っている。また、医療および製薬の政策において影響力のあるアドボケイト(代弁者)としての地位を増しており、研究グループは、両者間の相互作用の解明を試みた。その結果、相互作用としての「asset exchange(資産交換)」の問題が明確になったという。BMJ誌2019年12月12日号掲載の報告。
質的研究で、患者団体と製薬企業との関係性を調査
検討は、患者団体の代表者の観点から製薬企業のスポンサーシップをどのように見ているのか、また相互作用がどのように、なぜ、いつ発生するのかを調べることで、相互作用の質を理解し報告することを目的とした。
研究には、製薬企業と多様なレベルの資金提供でつながりのある、オーストラリアの23の患者団体から27人が参加。患者団体は、一般的な医療消費問題や疾患別の話題にフォーカスしている、地域または全国規模の団体であった。
調査は、倫理学の理論(グラウンデッドセオリー)で知られている経験的・質的インタビュー研究法を用い、インタビューでの聞き取りをデータカテゴリーにコード化して分析した。調査結果は、データを描出し解き明かすために新しい概念カテゴリーに編成され、また引用符でサポートされた。
資金提供を受ければ、何らかの見返りを求められることに留意すべき
患者団体と製薬企業の関係性のタイプとして、製薬企業のスポンサーシップに対する姿勢の違いによる4つのタイプが特定された。
支配的な関係性(dominant relationship)のタイプは、ビジネスパートナーシップとして成功したタイプといえ、患者団体は企業の人間と密接な協力関係を築いていることが示された。このタイプの患者団体は、企業の悪影響の可能性を認識しつつ、企業の影響を回避する戦略があるとの自信を示していた。
その他の患者団体は、不十分(unsatisfactory)または未発達(undeveloped)な関係性であることが示され、いくつかの患者団体(すべて一般医療消費団体)は、製薬企業とは基本的な関心事が対立しており、自分たちのミッションと相いれないものであることを示した。
患者団体は、自分たちと製薬企業の間の相互作用は、団体のメンバーが興味を示す可能性がある新薬を会社が手にしたときにより多く発生していると報告した。
また、企業の資金提供を受け入れた患者団体は、企業と“asset”(資産)の交換に関わっていることが明らかになった。患者団体は、金銭、情報、アドバイスを受け取るのと引き換えに、企業にマーケティングや主要なオピニオンリーダーとの関係構築の機会を与えることや、医薬品の入手や助成金に関する企業のロビー活動に協力したり、治験への参加者集めを支援したり、企業の信頼性を強化することに関与していた。
著者は、「製薬企業のスポンサーシップについての患者団体の幅広い見方について理解することは、両者間のあらゆる倫理的懸念を特定し統制しようとする患者団体にとって役立つものとなるだろう」と述べるとともに、「製薬企業から金銭を受け取っている患者団体は、“返礼”として特定の資産を要求される可能性があることを想定しておくべきである」と指摘。続けて「活発にマーケティングを行う機会があると見なした患者団体への製薬企業による選択的な資金提供は、患者団体本来の活動を製薬企業の関心事にねじ曲げて向かわせる可能性があり、企業の代理人としてアドボカシーを発揮し、医療政策にも影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らした。
(ケアネット)