1次治療のプラチナ製剤+タキサン系薬+ベバシズマブが奏効した進行卵巣がん患者において、維持療法はベバシズマブにオラパリブを追加することで、無増悪生存(PFS)期間が有意に延長することが認められた。この有効性はBRCA遺伝子変異のない相同組み換え修復異常(HRD)陽性患者で大きかった。フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のIsabelle Ray-Coquard氏らが、11ヵ国で実施された第III相の国際共同無作為化二重盲検試験「PAOLA-1試験」の結果を報告した。オラパリブは、新たに診断されたBRCA変異陽性の進行卵巣がん患者に対する維持療法として、大きな臨床的有益性をもたらすことが示唆されていたが、BRCA変異の有無にかかわらずオラパリブ+ベバシズマブ併用による維持療法が有効かどうかは不明であった。NEJM誌2019年12月19日号掲載の報告。
進行卵巣がんの1次治療奏効806例でオラパリブ+ベバシズマブvs.プラセボ+ベバシズマブ
研究グループは2015年7月~2017年9月の間に、新たに診断を受けた高悪性度の進行卵巣がんで1次治療のプラチナ製剤+タキサン系薬+ベバシズマブが奏効した患者(手術アウトカムまたはBRCA変異の有無は問わず)806例を対象とした。
被験者を無作為に2対1の割合で、オラパリブ(300mgを1日2回)+ベバシズマブ(15mg/kg)群(オラパリブ併用群、537例)と、プラセボ+ベバシズマブ群(ベバシズマブ単独群、269例)に割り付け、オラパリブは最長24ヵ月間、ベバシズマブは3週ごとに最長15ヵ月間投与した。
主要評価項目は、治験担当医の評価によるPFS期間(無作為化から病勢進行または死亡までの期間と定義)。有効性はintention-to-treat解析を行い評価した。
オラパリブ+ベバシズマブ群で進行卵巣がん患者のPFSが有意に延長
追跡期間中央値22.9ヵ月時点で、進行卵巣がん患者のPFS中央値はオラパリブ併用群が22.1ヵ月、ベバシズマブ単独群が16.6ヵ月であった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.49~0.72、p<0.001)。
オラパリブ併用群vs.ベバシズマブ単独群の進行卵巣がんの病勢進行または死亡のHRは、BRCA変異陽性HRD陽性患者では0.33(95%CI:0.25~0.45)(PFS中央値 37.2ヵ月vs.17.7ヵ月)、BRCA変異陰性HRD陽性患者では0.43(0.28~0.66)(28.1ヵ月vs.16.6ヵ月)であった。
有害事象は、オラパリブとベバシズマブでそれぞれ確立されている安全性プロファイルと一致した。
なお著者は、比較対照としてオラパリブ単独群が欠けていることを研究の限界として挙げており、PFSの有益性がオラパリブの追加によるものが大きいのか、オラパリブとベバシズマブの相乗効果なのかについて結論付けるのは困難であるとまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)