60歳以下の低リスク中悪性度(アグレッシブ)B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療において、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone(R-CHOP)併用療法の4サイクル投与は6サイクル(標準治療)に対し、有効性が非劣性で、毒性作用は治療サイクルが少ない分、抑制されることが、ドイツ・ザールラント大学のViola Poeschel氏らGerman Lymphoma Allianceが行った「FLYER試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年12月21/28日合併号に掲載された。国際予後指標(IPI)の年齢調整リスク因子がなく、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者では、6サイクルのR-CHOP様レジメンの予後はきわめて良好と報告されている。一方、多くの患者にとって、このレジメンに含まれる6サイクルの細胞傷害性薬剤の併用療法(CHOP様)は過剰治療となっている可能性があるという。
5ヵ国が参加した非劣性試験
本研究は、5ヵ国(デンマーク、イスラエル、イタリア、ノルウェー、ドイツ)の138施設が参加した多施設共同非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2005年12月2日~2016年10月7日の期間に患者登録が行われた(Deutsche Krebshilfeの助成による)。
対象は、年齢18~60歳で、StageI/II、血清乳酸脱水素酵素(LDH)濃度が正常、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するB細胞非ホジキンリンパ腫患者であった。
被験者は、R-CHOP 4サイクルに加えリツキシマブを単独で2回投与する群(4サイクル群)、またはR-CHOPを6サイクル投与する群(6サイクル群)に無作為に割り付けられた。1サイクルは21日であった。リツキシマブの用量は375mg/m
2(体表面積)とした。精巣リンパ腫を除き、放射線治療は計画されなかった。
主要評価項目は、3年時の無増悪生存(PFS)率とし、intention-to-treat集団で解析が行われた。非劣性マージンは-5.5%とした。安全性の評価は、1回以上の投与を受けた患者を対象とした。
3年PFS率:96% vs.94%、完全寛解率:91% vs.92%
592例が登録され、588例(4サイクル群293例[年齢中央値 49歳、女性 40%]、6サイクル群295例[47歳、39%])がintention-to-treat解析の対象となった。B症状が4サイクル群で多かった(9% vs.3%)。588例中499例(85%)がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であった。
追跡期間中央値66ヵ月(IQR:42~100)の時点における3年PFS率は、4サイクル群が96%(95%信頼区間[CI]:94~99)、6サイクル群は94%(91~97)であった。群間差は3%で、95%CIの下限値は0%であり、非劣性マージン(-5.5%)よりも高く、4サイクル群の6サイクル群に対する非劣性が確認された。
治療終了時に、4サイクル群267例(91%)、6サイクル群271例(92%)が完全寛解を達成し、それぞれ8例(3%)および11例(4%)が部分寛解で、6サイクル群の1例(<1%)が不変であった。治療中の増悪は両群3例(1%)ずつで認められた。
3年無イベント生存率は、4サイクル群が89%、6サイクル群も89%であり、3年全生存率はそれぞれ99%および98%だった。
また、事後解析では、5年PFS率は4サイクル群94%、6サイクル群94%、5年無イベント生存率はそれぞれ87%および88%、5年全生存率は97%および98%であった。
全体で40例が増悪または再発した。治療終了時の完全寛解/不確定完全寛解例での再発は、4サイクル群が11例(4%)、6サイクル群は13例(5%)であり、部分寛解例の再発はそれぞれ2例(25%)および2例(18%)だった。完全寛解/不確定完全寛解の再発例24例のうち、4例(17%)は登録から1年以内に、8例(33%)は2年以内に再発した。
4サイクル群(293例)では血液学的有害事象が294件、非血液学的有害事象が1,036件発現したのに比べ、6サイクル群(295例)ではそれぞれ426件および1,280件であり、4サイクル群で少ない傾向が認められた。重篤な有害事象は、4サイクル群48例、6サイクル群45例にみられた。感染症は、それぞれ116例(Grade3/4は22例)および156例(同23例)で発現した。6サイクル群で治療関連死が2例認められた。
著者は、「R-CHOP療法は、有効性を損なわずに、化学療法の施行数を減らすことができる」としている。
(医学ライター 菅野 守)